自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2546冊目】花輪莞爾『悪夢小劇場』

悪夢小劇場 (新潮文庫) 作者:花輪 莞爾 メディア: 文庫 この作家のことは全然、名前すら知らなかった。じんわりと漂うブラックユーモア。現実と非現実のあわいに漂うシュールな感覚。あえて似ている作家を思いつくまま挙げれば、筒井康隆、井上夢人、サキあ…

【2545冊目】中島梓『ガン病棟のピーターラビット』

ガン病棟のピーターラビット (ポプラ文庫) 作者:中島 梓 発売日: 2015/01/02 メディア: 文庫 この人は生涯に、ガン闘病記を3冊書いている。以前取り上げた『アマゾネスのように』、本書、そして最期の日々を綴った『転移』である。何度もガンになってしまう…

【2544冊目】道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)作者:道尾秀介発売日: 2012/07/01メディア: Kindle版 後から考えるとけっこう陰惨で救いのない話なのだが、その割に読後感は妙にさわやかだ。だがそのさわやかさは、どこか病んでいる。それがかえって、じんわりと怖い。ちなみ…

【2543冊目】伊藤亜紗『記憶する体』

記憶する体作者:伊藤 亜紗発売日: 2019/09/18メディア: 単行本 たとえば、ある全盲の女性は話しながらメモをとる。別のやはり全盲の男性は、数字の0はピンク、1は白など、数字や文字から色彩を連想する。交通事故で左足の膝から下を失った男性は、「ない足を…

【2542冊目】サマセット・モーム『月と六ペンス』

月と六ペンス (新潮文庫)作者:サマセット モーム発売日: 2014/03/28メディア: 文庫 大傑作である。久しぶりに読み返したが、あらためてものすごい作品だと思う。人間の真実そのものが、この一冊にあますところなく描かれている。ロンドンの平凡な株式仲買人…

【2541冊目】宮下奈都『羊と鋼の森』

羊と鋼の森 (文春文庫)作者:宮下 奈都発売日: 2018/02/09メディア: Kindle版 映画化もされたベストセラーなので、内容はご存知の方が多いだろう。見習い調律師の成長を描いた作品なのだが、さほど抵抗なくするする読める。主人公の外村が、いろいろ悩みや葛…

【2540冊目】塩野七生『神の代理人』

神の代理人 (新潮文庫)作者:塩野 七生発売日: 2012/10/29メディア: 文庫 「神の代理人」とは、カトリックの最高位、ローマ教皇のことである。ルネサンス期のローマ教皇のうち4人を描いた本書は、質量ともに単行本4冊分。後年の塩野七生なら内容をもっと膨…

【2539冊目】尾川正二『原稿の書き方』

原稿の書き方 (講談社現代新書 433)作者:尾川 正二メディア: 新書 なんと1976年に刊行された「書き方指南」の本。古い。だいたい、いまどき原稿用紙にものを書く機会さえほとんどない。それでも、この本に書かれれている指摘の多くは、今も十分役に立つ。そ…

【2538冊目】福永武彦『幼年』

幼年 (河出文庫) 作者:福永 武彦 メディア: 文庫 「幼年」「伝説」「邯鄲」「風雪」「あなたの最も好きな場所」「湖上」の6篇が収められている。 最初の「幼年」が変わっている。著者自身の幼年時代を綴ったものなのだが、段落の切れ方がヘンなのだ。文章の…

【本以外】ロンドン・ナショナル・ギャラリー展に行ってきました

美術館は久しぶり。展覧会が再開されていたのは知っていたが、なんとなく足が遠のいてしまっていた。習慣が途切れるとはおそろしい。 さて、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展である。展示数は61点と、イギリスを代表する美術館の大規模コレクション展とし…

【2537冊目】佐藤眞一『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』

認知症の人の心の中はどうなっているのか? (光文社新書)作者:佐藤眞一発売日: 2018/12/12メディア: 新書 これは良い本だった。認知症の症状や特性などの解説もわかりやすいが、なんといっても認知症ではなく「認知症の人」にフォーカスしているところがすば…

【2536冊目】磯田道史『龍馬史』

龍馬史 (文春文庫)作者:道史, 磯田発売日: 2013/05/10メディア: 文庫 司馬遷が『史記』で創始した、紀伝体というスタイルがある。一人の人間に着目して、歴史を綴っていく手法だ。本書はいわば幕末版紀伝体。坂本龍馬という人物を描きつつ、龍馬というスコー…

【2535冊目】川上弘美『神様』

神様 (中公文庫)作者:川上 弘美発売日: 2001/10/01メディア: 文庫 デビュー作「神様」の完成度にまず驚いた。「くまにさそわれて散歩に出る」という書き出しが良い。何の説明もなく、読者を異世界に引っ張り込む。「熊に誘われて」などと漢字を使わないのは…

【2534冊目】山崎亮『ケアするまちのデザイン』

ケアするまちのデザイン:対話で探る超長寿時代のまちづくり作者:山崎 亮発売日: 2019/03/28メディア: 単行本 コミュニティ・デザイナーの著者が、「ケアするまちづくり」の現場を訪ねて行った鼎談4つをおさめている。福祉、医療、コミュニティが交錯する現…

【2533冊目】『「この世界の片隅に」こうの史代・片渕須直対談集』

「この世界の片隅に」こうの史代 片渕須直 対談集 さらにいくつもの映画のこと作者:史代, こうの,須直, 片渕発売日: 2019/11/29メディア: 単行本 映画『この世界の片隅に』を監督した片渕須直氏と、原作を描いたこうの史代氏が、映画の公開から、(監督曰く…

【2532冊目】佐々涼子『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』

紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている: 再生・日本製紙石巻工場 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)作者:佐々 涼子発売日: 2017/02/09メディア: 文庫 いろんなことを忘れていた。そのことを反省させられる一冊だった。震災のことを忘れていた。いや、忘れてい…

【2531冊目】チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』

82年生まれ、キム・ジヨン作者:チョ・ナムジュ発売日: 2019/02/13メディア: Kindle版 読んでいて「これは私のことだ」と思える小説が、ときどきある。おそらく多くの女性にとって、本書の主人公キム・ジヨンの人生は、他人事には感じられないのではないか。…

【2530冊目】六車由実『介護民俗学という希望』

介護民俗学という希望: 「すまいるほーむ」の物語 (新潮文庫)作者:由実, 六車発売日: 2018/05/27メディア: 文庫 『驚きの介護民俗学』という本には、文字通り驚かされた。介護現場こそがもっとも豊かな「語り」の場であり、現代の古老は老人ホームにいる。そ…

【2529冊目】島尾新『水墨画入門』

水墨画入門 (岩波新書) 作者:新, 島尾 発売日: 2019/12/22 メディア: 新書 冒頭のカラー口絵に、まず息を呑む。郭熙「早春図」に牧谿「観音猿鶴図」、長谷川等伯「松林図屏風」に雪舟「冬景山水図」と、オールタイムベスト級の水墨画がずらりと並ぶ。西洋絵…

【2528冊目】ヤニス・バルファキス『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 作者:ヤニス・バルファキス 発売日: 2019/03/07 メディア: Kindle版 ひところずいぶんと話題になった本。著者は、経済危機の渦中のギリシャで財務大臣を務めた人物だ。我が国と比べ…

【2527冊目】中島信子『八月のひかり』

八月のひかり 作者:中島 信子 発売日: 2019/07/19 メディア: Kindle版 現代日本の「貧困」を正面から描いた児童文学。弟の勇希の明るさや母親の善人ぶりにだいぶ救われてはいるが、基本的には暗く、ヘビーな内容だ。父親の失職がきっかけで起きた暴力、子供…

【2526冊目】東畑開人『居るのはつらいよ』

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく) 作者:東畑 開人 発売日: 2019/02/18 メディア: 単行本 エッセイ風のおどけた語り口。だが、その内容はなかなかに深遠だ。なにしろこの本は、ケアとセラピーの違い、ケアの本質を、…

【2525冊目】ミシェル・マクナマラ『黄金州の殺人鬼』

黄金州の殺人鬼――凶悪犯を追いつめた執念の捜査録 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-9) 作者:ミシェル・マクナマラ 発売日: 2019/09/28 メディア: 単行本(ソフトカバー) ある意味、フィクションでは絶対にありえない一冊だ。事実だけがもつ重み…

【2523・2524冊目】ロルフ・ドベリ『Think clearly』『Think smart』

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法 作者:ロルフ・ドベリ 発売日: 2019/04/12 メディア: Kindle版 Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法 作者:ロルフ・ドベリ 発売日: 2020/01/22 メディア…

【2522冊目】エドワード・P・ジョーンズ『地図になかった世界』

地図になかった世界 (エクス・リブリス) 作者:エドワード P ジョーンズ 発売日: 2011/12/21 メディア: 単行本 なんだかとんでもないモノを読んでしまった気がする。なんというか、この本の中に世界がまるごと入っているようなスケールの小説。『カラマーゾフ…

【2521冊目】荒井裕樹『障害者差別を問いなおす』

『障害と文学』『差別されている自覚はあるか』など、先鋭的な視点で日本の障害者運動や障害者差別の歴史を追い続けてきた著者による、本気の「障害者差別論」。とはいえ、精神障害者や知的障害者への差別のこと、障害者権利条約や障害者差別解消法のこと等…

【2520冊目】カート・ヴォネガット『国のない男』

国のない男 (中公文庫) 作者:カート・ヴォネガット 発売日: 2017/03/22 メディア: 文庫 以前読んだ『スラップスティック』より、私にはこちらの本のほうがすんなり入ってきた。御年82歳のヴォネガットによるエッセイ集。遺作である。 とはいえ、本書には枯…

【2519冊目】北村喜宣『リーガルマインドが身につく自治体行政法入門』

リーガルマインドが身につく自治体行政法入門 作者:喜宣, 北村 発売日: 2018/01/01 メディア: 単行本 冒頭の「小学校3年生の子どもに『役所って何をするところなの?』って聞かれたらどう答える?」という問いにまずドキッとする。あなたなら何と答えますか…

【本以外】選挙事務を終えて

たまには雑談的に。選挙のことなど。 この「読書ノート」をお読みの方はご存知だろうが、選挙事務を担っているのは区市町村の職員である。それは国政選挙だろうが、今回のように知事選だろうが同じこと。地方自治法別表の「法定受託事務リスト」を見ていただ…

【2518冊目】小川洋子『ブラフマンの埋葬』

ブラフマンの埋葬 (講談社文庫) 作者:小川 洋子 発売日: 2007/04/13 メディア: 文庫 ブラフマンとは、本書の説明ではサンスクリット語で「謎」という意味。だが実際は、ヒンドゥー教の宇宙原理を指す。だから「ブラフマンの埋葬」とはものすごく深遠なタイト…