自治体職員の読書ノート

自治体で働く活字中毒者が、読んだ本を紹介します。普段の読書の紹介はインスタで。

【2551冊目】加藤徹『貝と羊の中国人』

貝と羊の中国人 (新潮新書) 作者:加藤 徹 発売日: 2006/06/16 メディア: 新書 京劇の研究が専門という著者による中国論。緻密というよりむしろラフスケッチ風なのだが、中国のような巨大で複雑な相手を扱うとなると、このくらい大雑把なほうが全体像をつかみ…

【2550冊目】辻陽『日本の地方議会』

日本の地方議会-都市のジレンマ、消滅危機の町村 (中公新書) 作者:辻 陽 発売日: 2019/09/14 メディア: 新書 地方議会をめぐる書籍の中でも、近年の良書である。新書というコンパクトなサイズの中に、地方議会の制度、現状、問題点、解決策をバランスよく収…

【2549冊目】中村智志『大いなる看取り』

大いなる看取り―山谷のホスピスで生きる人びと 作者:中村 智志 メディア: 単行本 東京・山谷のドヤ街にある「きぼうのいえ」は、行き場のない人々を看取るための施設である。 マザー・テレサの「死を待つ人の家」の日本版を作ろうと、山本雅基、美恵の二人が…

【2548冊目】真魚八重子『バッドエンドの誘惑』

バッドエンドの誘惑~なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか~ (映画秘宝セレクション) 作者:真魚 八重子 発売日: 2017/03/02 メディア: 単行本(ソフトカバー) う〜ん。残念ながら、私にはちょっと合わなかった。タイトルはけっこうツボだったんだけどねえ。 …

【2547冊‌目】‌ク‌リ‌ス‌チャ‌ン・‌メ‌ル‌ラ‌ン‌『オー‌ケ‌ス‌ト‌ラ』‌

‌ オーケストラー―知りたかったことのすべて 作者:クリスチャン・メルラン 発売日: 2020/02/19 メディア: 単行本 本‌文‌500‌ペー‌ジ‌以‌上。‌索‌引‌だ‌け‌で‌30‌ペー‌ジ‌以‌上。‌お‌そ‌る‌べ‌き‌ボ‌リュー‌ム‌に‌最‌初‌は‌ビ‌ビ‌る‌が、‌読‌み‌始‌め‌る‌と‌…

【2546冊目】花輪莞爾『悪夢小劇場』

悪夢小劇場 (新潮文庫) 作者:花輪 莞爾 メディア: 文庫 この作家のことは全然、名前すら知らなかった。じんわりと漂うブラックユーモア。現実と非現実のあわいに漂うシュールな感覚。あえて似ている作家を思いつくまま挙げれば、筒井康隆、井上夢人、サキあ…

【2545冊目】中島梓『ガン病棟のピーターラビット』

ガン病棟のピーターラビット (ポプラ文庫) 作者:中島 梓 発売日: 2015/01/02 メディア: 文庫 この人は生涯に、ガン闘病記を3冊書いている。以前取り上げた『アマゾネスのように』、本書、そして最期の日々を綴った『転移』である。何度もガンになってしまう…

【2544冊目】道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)作者:道尾秀介発売日: 2012/07/01メディア: Kindle版 後から考えるとけっこう陰惨で救いのない話なのだが、その割に読後感は妙にさわやかだ。だがそのさわやかさは、どこか病んでいる。それがかえって、じんわりと怖い。ちなみ…

【2543冊目】伊藤亜紗『記憶する体』

記憶する体作者:伊藤 亜紗発売日: 2019/09/18メディア: 単行本 たとえば、ある全盲の女性は話しながらメモをとる。別のやはり全盲の男性は、数字の0はピンク、1は白など、数字や文字から色彩を連想する。交通事故で左足の膝から下を失った男性は、「ない足を…

【2542冊目】サマセット・モーム『月と六ペンス』

月と六ペンス (新潮文庫)作者:サマセット モーム発売日: 2014/03/28メディア: 文庫 大傑作である。久しぶりに読み返したが、あらためてものすごい作品だと思う。人間の真実そのものが、この一冊にあますところなく描かれている。ロンドンの平凡な株式仲買人…

【2541冊目】宮下奈都『羊と鋼の森』

羊と鋼の森 (文春文庫)作者:宮下 奈都発売日: 2018/02/09メディア: Kindle版 映画化もされたベストセラーなので、内容はご存知の方が多いだろう。見習い調律師の成長を描いた作品なのだが、さほど抵抗なくするする読める。主人公の外村が、いろいろ悩みや葛…

【2540冊目】塩野七生『神の代理人』

神の代理人 (新潮文庫)作者:塩野 七生発売日: 2012/10/29メディア: 文庫 「神の代理人」とは、カトリックの最高位、ローマ教皇のことである。ルネサンス期のローマ教皇のうち4人を描いた本書は、質量ともに単行本4冊分。後年の塩野七生なら内容をもっと膨…

【2539冊目】尾川正二『原稿の書き方』

原稿の書き方 (講談社現代新書 433)作者:尾川 正二メディア: 新書 なんと1976年に刊行された「書き方指南」の本。古い。だいたい、いまどき原稿用紙にものを書く機会さえほとんどない。それでも、この本に書かれれている指摘の多くは、今も十分役に立つ。そ…

【2538冊目】福永武彦『幼年』

幼年 (河出文庫) 作者:福永 武彦 メディア: 文庫 「幼年」「伝説」「邯鄲」「風雪」「あなたの最も好きな場所」「湖上」の6篇が収められている。 最初の「幼年」が変わっている。著者自身の幼年時代を綴ったものなのだが、段落の切れ方がヘンなのだ。文章の…

【本以外】ロンドン・ナショナル・ギャラリー展に行ってきました

美術館は久しぶり。展覧会が再開されていたのは知っていたが、なんとなく足が遠のいてしまっていた。習慣が途切れるとはおそろしい。 さて、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展である。展示数は61点と、イギリスを代表する美術館の大規模コレクション展とし…

【2537冊目】佐藤眞一『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』

認知症の人の心の中はどうなっているのか? (光文社新書)作者:佐藤眞一発売日: 2018/12/12メディア: 新書 これは良い本だった。認知症の症状や特性などの解説もわかりやすいが、なんといっても認知症ではなく「認知症の人」にフォーカスしているところがすば…

【2536冊目】磯田道史『龍馬史』

龍馬史 (文春文庫)作者:道史, 磯田発売日: 2013/05/10メディア: 文庫 司馬遷が『史記』で創始した、紀伝体というスタイルがある。一人の人間に着目して、歴史を綴っていく手法だ。本書はいわば幕末版紀伝体。坂本龍馬という人物を描きつつ、龍馬というスコー…

【2535冊目】川上弘美『神様』

神様 (中公文庫)作者:川上 弘美発売日: 2001/10/01メディア: 文庫 デビュー作「神様」の完成度にまず驚いた。「くまにさそわれて散歩に出る」という書き出しが良い。何の説明もなく、読者を異世界に引っ張り込む。「熊に誘われて」などと漢字を使わないのは…

【2534冊目】山崎亮『ケアするまちのデザイン』

ケアするまちのデザイン:対話で探る超長寿時代のまちづくり作者:山崎 亮発売日: 2019/03/28メディア: 単行本 コミュニティ・デザイナーの著者が、「ケアするまちづくり」の現場を訪ねて行った鼎談4つをおさめている。福祉、医療、コミュニティが交錯する現…

【2533冊目】『「この世界の片隅に」こうの史代・片渕須直対談集』

「この世界の片隅に」こうの史代 片渕須直 対談集 さらにいくつもの映画のこと作者:史代, こうの,須直, 片渕発売日: 2019/11/29メディア: 単行本 映画『この世界の片隅に』を監督した片渕須直氏と、原作を描いたこうの史代氏が、映画の公開から、(監督曰く…

【2532冊目】佐々涼子『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』

紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている: 再生・日本製紙石巻工場 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)作者:佐々 涼子発売日: 2017/02/09メディア: 文庫 いろんなことを忘れていた。そのことを反省させられる一冊だった。震災のことを忘れていた。いや、忘れてい…

【2531冊目】チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』

82年生まれ、キム・ジヨン作者:チョ・ナムジュ発売日: 2019/02/13メディア: Kindle版 読んでいて「これは私のことだ」と思える小説が、ときどきある。おそらく多くの女性にとって、本書の主人公キム・ジヨンの人生は、他人事には感じられないのではないか。…

【2530冊目】六車由実『介護民俗学という希望』

介護民俗学という希望: 「すまいるほーむ」の物語 (新潮文庫)作者:由実, 六車発売日: 2018/05/27メディア: 文庫 『驚きの介護民俗学』という本には、文字通り驚かされた。介護現場こそがもっとも豊かな「語り」の場であり、現代の古老は老人ホームにいる。そ…

【2529冊目】島尾新『水墨画入門』

水墨画入門 (岩波新書) 作者:新, 島尾 発売日: 2019/12/22 メディア: 新書 冒頭のカラー口絵に、まず息を呑む。郭熙「早春図」に牧谿「観音猿鶴図」、長谷川等伯「松林図屏風」に雪舟「冬景山水図」と、オールタイムベスト級の水墨画がずらりと並ぶ。西洋絵…

【2528冊目】ヤニス・バルファキス『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 作者:ヤニス・バルファキス 発売日: 2019/03/07 メディア: Kindle版 ひところずいぶんと話題になった本。著者は、経済危機の渦中のギリシャで財務大臣を務めた人物だ。我が国と比べ…

【2527冊目】中島信子『八月のひかり』

八月のひかり 作者:中島 信子 発売日: 2019/07/19 メディア: Kindle版 現代日本の「貧困」を正面から描いた児童文学。弟の勇希の明るさや母親の善人ぶりにだいぶ救われてはいるが、基本的には暗く、ヘビーな内容だ。父親の失職がきっかけで起きた暴力、子供…

【2526冊目】東畑開人『居るのはつらいよ』

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく) 作者:東畑 開人 発売日: 2019/02/18 メディア: 単行本 エッセイ風のおどけた語り口。だが、その内容はなかなかに深遠だ。なにしろこの本は、ケアとセラピーの違い、ケアの本質を、…

【2525冊目】ミシェル・マクナマラ『黄金州の殺人鬼』

黄金州の殺人鬼――凶悪犯を追いつめた執念の捜査録 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-9) 作者:ミシェル・マクナマラ 発売日: 2019/09/28 メディア: 単行本(ソフトカバー) ある意味、フィクションでは絶対にありえない一冊だ。事実だけがもつ重み…

【2523・2524冊目】ロルフ・ドベリ『Think clearly』『Think smart』

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法 作者:ロルフ・ドベリ 発売日: 2019/04/12 メディア: Kindle版 Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法 作者:ロルフ・ドベリ 発売日: 2020/01/22 メディア…

【2522冊目】エドワード・P・ジョーンズ『地図になかった世界』

地図になかった世界 (エクス・リブリス) 作者:エドワード P ジョーンズ 発売日: 2011/12/21 メディア: 単行本 なんだかとんでもないモノを読んでしまった気がする。なんというか、この本の中に世界がまるごと入っているようなスケールの小説。『カラマーゾフ…