【2834冊目】山岸涼子『鬼』
「怖い」というより「哀しい」一冊でした。
特に最初の「鬼」という作品ですね。飢饉にあえぐ江戸時代の東北で、口減らしのため穴に捨てられた子供たちと、その場所を訪れた現代の大学生たち。
穴に捨てられた子供たちは、飢えのあまり、先に死んだ子を食べてしまいます。そうして生き残った子も、自分たちを捨てた大人たちへの恨みと、自分が食べてしまった子らへの罪悪感で引き裂かれてしまう。人肉食を描いた作品の中でも、飛び抜けて悲痛な物語ではないでしょうか。
一方の現代の大学生たちもまた、見えづらいながらさまざまな事情を抱えています。そんな彼らが、なんと地蔵菩薩に手紙を書くという手段によって、子供たちの魂に救済を与えるというのが面白い。そして、彼ら自身もそれによって救われるのですね。ここにあるのは、究極の「赦し」と「救い」の物語でもあるのです。
「人を許すことが、自分も許されることなんだ」
この言葉が、読み終わった後も心に響きます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!