自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2552冊目】山口つばさ『ブルーピリオド』

 

 

マンガ大賞を受賞した話題作というのは知っていたが、読んでみたら予想以上。「美術」をテーマにした学生群像劇という点では『のだめカンタービレ』を思わせるが、芸大受験が6巻までのクライマックスになっていることもあり(その意味では美術版『ドラゴン桜』というべきか)、一気に惹き付けて読ませるパワーがある。ちなみにタイトルは若き日のピカソの「青の時代」にもかけているのだろうが、良いタイトルだ。

主人公の八虎は、なんでも器用にこなすことができ、空気も読めて勉強もできるバリバリのリア充。だが、美術という「本気の目標」が見つかった瞬間から、その「器用さ」が、かえって最大の弱点となって八虎に牙をむく。自分の薄っぺらさ、中身の無さが、描いた絵からしっかり伝わってしまうのが、アートの恐ろしさなのである。

そんな八虎のキャラクターに加えて、「女装男子」の龍二、天才肌の世田介といった個性的な脇役が加わることで、物語がどんどん転がっていく(この「脇役の強烈な個性」が本作のひとつの読みどころ)。あと、「のだめ」では音楽という目に見えないものを絵で表現していたが、コチラは実際の絵を使って登場人物の内面や個性を描くという、別の意味での難しい挑戦に成功している。

挫折と成長の繰り返しという王道パターンだが、アートという舞台を選ぶことで、それが思わぬ輝きを得た。7巻からは新局面となり、ますます目が離せないマンガ。さらに「描く側」の視点で作品を眺めるというだけで、今までと絵画の見方がガラリと変わること請け合いだ。アート好き、美術館好きにもおススメしたい。