自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2550冊目】辻陽『日本の地方議会』

 

 

地方議会をめぐる書籍の中でも、近年の良書である。新書というコンパクトなサイズの中に、地方議会の制度、現状、問題点、解決策をバランスよく収めている。いたずらな理想論にもヤミクモなバッシングにも走らず、現実をきちんと踏まえた丁寧な議論の進め方に好感がもてる。

 

本書の特徴は、日本の地方議会を一様のものとは捉えていないことにある。たしかに、定数127名の東京都議会と定数6名の高知県大川村議会はどちらも「日本の地方議会」であるが、これを同じ制度、同じ考え方で扱うこと自体、言われてみれば無理がある。

 

議員は専門職か名誉職か、といった議論も、こうした現実を踏まえて行う必要がある。例えば、専業議員の割合は都道府県で53.3%だが、これが市区議会では42.3%、町村議会では21.6%にまで下がる。議員報酬は都道府県議会の平均が月額93万円だが、町村議会だと21万5000円。東京都御蔵島村では10万円とのことで、これで専業議員をやれと言われても無理な話だろう。ちなみに、いろいろバッシングされることも多い政務活動費を見ると、都道府県議会の平均が月35万円(最高額が大阪府の月59万円)に対して、町村議会ではそもそも公布している自治体が全体の2割ほどで、金額も平均9,465円。いったい、これで何を「活動」しろというのだろう。

 

こうした状況を踏まえて著者が提案するのが「多様性の承認」、つまり今は地方自治法で縛られている議会の形態にいくつかのバリエーションをもたせ、自治体の規模や態様ごとに選べるようにするというものだ。その射程範囲には議員の立場や報酬のみならず、選挙制度や兼職制限の緩和にまで及ぶ(実際、地方で議員の成り手が少ない要因の一つに、この兼職制限がある)。

 

要するに「日本の地方議会」というくくりでモノを考えること自体から、われわれは脱却する必要があるのだろう。そしてそのことは、何も地方議会制度だけに言えることではない。地方ごとの多様性を認め、全国一律の硬直したシステムを打破していくこと。その先にしか、日本の地方自治の未来は存在しないのではなかろうか。