自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

【2820冊目】伊藤亜紗・中島岳志・若松英輔・國分功一郎・磯崎憲一郎『「利他」とは何か』

「利他」とは何か (集英社新書)作者:中島岳志,若松英輔,國分功一郎,磯崎憲一郎集英社Amazon 「利他」が、コロナ禍で注目を集めているという(ホントに?)。でも、利他って一体なんなのか。今もっとも脂の乗った5人の論者による論考。とにかくメンバーがめ…

【2819冊目】ロバート・L・スティーヴンソン『ジキルとハイド』

ジキルとハイド (新潮文庫)作者:ロバート・L. スティーヴンソンShinchosha/Tsai Fong BooksAmazon 小学生の頃に児童書バージョンで読んで以来でしょうか。もっとも、読んだことはなくても、ほとんどの人がどういう話か知っているという意味では、文学史上も…

【2818冊目】凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』

滅びの前のシャングリラ作者:凪良ゆう中央公論新社Amazon 1か月後に地球に小惑星が激突し、人類が絶滅する世界での物語。似たような設定で思い出すのは伊坂幸太郎『終末のフール』だが、あちらは年単位の猶予があったので、どこか静かで達観した印象があっ…

【2817冊目】小川三夫『棟梁』

技を伝え、人を育てる 棟梁 (文春文庫)作者:小川 三夫文藝春秋Amazon 本当に大事なことだけが詰まった、ホンモノの仕事論。本当に大事なことは、言葉で伝えるのは不可能だ。だから、本書は「伝え方」自体を教える本になっている。聞き書きの名手、塩野米松さ…

【2816冊目】ラフカディオ・ハーン『小泉八雲東大講義録』

小泉八雲東大講義録 日本文学の未来のために (角川ソフィア文庫)作者:ラフカディオ・ハーンKADOKAWAAmazon 明治時代、お雇い外国人として東京帝国大学で教えていたラフカディオ・ハーンの講義録である。ハーンといえば『怪談』の著者小泉八雲であるが、本書…

【2815冊目】姫野カオルコ『昭和の犬』

昭和の犬 (幻冬舎文庫)作者:姫野カオルコ幻冬舎Amazon しょっちゅう理不尽な怒りをぶちまける(本書では「割れる」と表現。うまい言い方だ)シベリア帰りの父と、自分の娘のこととなるとこれっぽっちも認めない母のもと、昭和33年に生まれた柏木イク。いささ…

【2814冊目】立松和平『道元禅師』

道元禅師〈上〉 (新潮文庫)作者:和平, 立松新潮社Amazon 道元禅師〈中〉 (新潮文庫)作者:和平, 立松新潮社Amazon 道元禅師〈下〉 (新潮文庫)作者:和平, 立松新潮社Amazon とてつもない本でした。単行本で上下巻、計1,000ページ以上(その後三分冊で文庫化さ…

【2813冊目】信田さよ子『カウンセラーは何を見ているか』

カウンセラーは何を見ているか (シリーズケアをひらく)作者:信田さよ子医学書院Amazon カウンセラーは感情労働?カウンセラーの仕事は「傾聴」し「共感」すること?カウンセラーがやっているのは「心のケア」?カウンセラーは、相手の自己決定を促す仕事?い…

【2812冊目】結城浩『数学ガール』

数学ガール作者:結城 浩SBクリエイティブAmazon 今さら『数学ガール』かよ、と思われるかもしれませんが、初版が出た2007年には、こんな人気シリーズになるとは思わなかったんです。「フェルマーの最終定理」「ゲーデルの不完全性定理」などの続編、「秘密ノ…

【2811冊目】最相葉月『れるられる』

れるられる (シリーズ ここで生きる)作者:最相 葉月岩波書店Amazon 軽いエッセイかと思って、何の気無しに読み始めたのですが、読むうちに背筋が伸びてきました。思いのほか、しっかり中身が詰まっています。境目について書いた、と著者自身が冒頭に述べてい…

【2810冊目】ミカエル・ロネー『ぼくと数学の旅に出よう』

ぼくと数学の旅に出よう―真理を追い求めた1万年の物語 作者:ミカエル・ロネー NHK出版 Amazon 最近、わけあって数学の入門書系の本を何冊か読んでいるが、その中でも本書は飛び抜けている。トピックの選び方、説明のうまさ、絶妙のユーモア、いずれも申し分…

【2809冊目】村上春樹『羊をめぐる冒険』

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)作者:村上 春樹講談社Amazon 羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)作者:村上 春樹講談社Amazon 村上春樹、初期の代表作です。一ヶ月まえに妻と離婚し、東京で広告の仕事をしている「僕」は、一枚の写真がきっかけで、羊をめぐる…

【2808冊目】アミール・D・アクゼル『「無限」に魅入られた天才数学者たち』

「無限」に魅入られた天才数学者たち (〈数理を愉しむ〉シリーズ)作者:アミール・D・ アクゼル早川書房Amazon 無限という言葉を聞いて、どんなイメージが浮かぶだろうか。例えば「数」。1、2、3・・・と、数字はいくら数えても終わりがない(最も大きな数字を考…

【2807冊目】宇佐見りん『推し、燃ゆ』

推し、燃ゆ作者:宇佐見りん河出書房新社Amazon これはすごかった。新たな日本文学の誕生だ。言葉の熱量がすごい。それを完全にハンドリングして、ドライブする著者の腕力がすごい。現代的でありながらすべての年齢層に通じる、個性的で普遍的な文章がすごい…