【2810冊目】ミカエル・ロネー『ぼくと数学の旅に出よう』
最近、わけあって数学の入門書系の本を何冊か読んでいるが、その中でも本書は飛び抜けている。トピックの選び方、説明のうまさ、絶妙のユーモア、いずれも申し分ない。さすが新進気鋭の数学者にして、30万人以上が登録する「数学Youtuber」だけのことはある。
組み立て自体はとてもシンプルだ。旧石器時代の「手斧の対称性」や「数の起源」にはじまり、バビロニア、ギリシャ、インド、アラビア、そしてヨーロッパと、時代の流れとともに数学の歴史をたどっていく。その時代の文明の中心地できまって、数学が発展するのは、文明の発展が数学の進歩を生むのか、はたまた数学の活用で文明が発展したのか。
中でも、インドやアラビアの数学にしっかり光を当てているのは好感がもてる。特にインドのブラフマーグプタなど、ゼロと負の数についての「史上初の完璧な証明」を成し遂げたとんでもない業績の持ち主なのに、現代ではほとんど知られていない。本書をきっかけに、こうした人々についてももっと知られてほしい。また、ヘレニズム時代のアレクサンドリア随一の数学者がヒュパティアという女性だったことも、もっと知られてよいと思われる(ちなみにヒュパティアは、キリスト教信者たちによって殺され、遺体は引き裂かれて燃やされてしまったそうだ)。
数学自体についてもたっぷり触れられているが、これがまた、どんな類書よりもわかりやすく、すんなり頭に入ってくる。重要なトピックはコラムとしてまとめられているのも良い。「パスカルの三角形」(p.257)など、その存在は知っていたが、それがどれくらいものすごいものであるかは、本書を読むまで全然分かっていなかった(特に、三角数やフィボナッチ数列がその中に入っているとはびっくりだ)。
まあ、筋金入りの数学オンチである私が言うことなので、ある程度割り引いていただいたほうがいいかもしれないが、とにかく面白い一冊だった。YouTubeチャンネルも覗いてみたがフランス語・・・・・・。
う〜ん。日本でもこういう、純粋に数学の楽しさを伝えてくれる動画ってないのだろうか(ざっと探してみたが、ほとんどが受験用や授業の解説用だった)。誰か知っていたら教えてください。
最後までお読みいただき,ありがとうございました!
#読書 #読了