【2812冊目】結城浩『数学ガール』
今さら『数学ガール』かよ、と思われるかもしれませんが、初版が出た2007年には、こんな人気シリーズになるとは思わなかったんです。「フェルマーの最終定理」「ゲーデルの不完全性定理」などの続編、「秘密ノート」シリーズ、さらにはなんと『行政法ガール』なんて本まで出るなんて。いやはや、おみそれしました。
簡単に言ってしまえば「ラノベ+数学」なんですが、たぶん本シリーズの成功の秘訣は、ラノベ風味を取り入れながら、数学のほうをしっかり本格的に取り上げたことにあるように思います。この手の「やわらかめの本」では避けられがちな数式もガッツリ出てきますし、内容も初歩的なところからかなり高度なものまで扱われています。
つまりは、メインの数学で手を抜かず、それでいてラブコメ要素はしっかり組み込んでいるのですね。そのバランスがとてもいいので、数式のほうではついていけなくなっても、ミルカさんやテトラちゃんとのやりとりの部分はしっかり読める。結果、脱落しないでとにかく最後まで到達できるのです。
そして、なんといっても本書が好ましいのは、出てくる「僕」も「ミルカ」も「テトラ」も、とにかく数学に楽しそうに取り組んでいるところだと思います。だから読んでいると、数式やグラフなどに対する苦手意識が、いつのまにか薄れていくのを感じるのです(完全に消えるところまではいきませんでしたが)。考えてみれば、中学でも高校でも、数学を「楽しそうに」やっている人には、先生も含めてお目にかかったことがないような気がします。そういう人が一人でもいたら、学力はともかく数学に対する私自身の意識も、少しは変わっていたのかもしれません。
最後までお読みいただき,ありがとうございました!
#読書 #読了