自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2797冊目】伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』



大学に入ったばかりの「僕」が、隣の部屋に住む青年に「一緒に本屋を襲わないか」と言われる「現在」のパートと、ペットショップに勤める「わたし」とブータン人のドルジが「ペット殺し」の三人組と出会う「二年前」のパート。過去と現在が交互に語られます。


そこに共通して登場するのが、河崎という名前の人物なのですが、これが伊坂幸太郎らしい、トリッキーな人物。こういう「したり顔で不思議なことを語る人物」を描かせると、この人はやはりうまいですね。


ペット殺しの連中のような邪悪なキャラクターも登場しますが、基本的に物語は、穏やかに、飄々と進みます。「陽気なギャング」シリーズのような畳み掛けるようなテンポではなく、どちらかというとバラードのような。本書に何度も登場する、ボブ・ディランの歌のような。


どこか飄然としていて、どこかコミカルで、でもどこか淋しげ。伊坂作品の中でも、かなり「心に沁みる」リリカルな作品でもあります。


ちなみに「陽気なギャング」の響野さんが名前だけ登場しますね。伊坂版「人間劇場」といったところでしょうか。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


#読書 #読了