【2734冊目】司馬遼太郎『燃えよ剣』
「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン56冊目。
先日の『ひらいて』に続き、こちらも映画化とのこと。新潮文庫100冊、そういう選書なんでしょうか。それにしても気がかりなのは、ジャニーズに土方歳三が務まるのか、ということですが。あの厚み、あの迫力は、なまなかな俳優では太刀打ちできないでしょう。
それほどに、本書で土方歳三が放っている存在感は圧倒的です。喧嘩の名手で、組織づくりの天才。学はなく学者肌の男を嫌うが、実はこっそり俳句をひねるという風雅な面ももつという、一筋縄ではいかない人物として描かれています。
佐幕だの勤皇だの、攘夷だの開国だのという理念には興味を持たず、常に地に足をつけ、おのれの生き様に殉じてみせた男でもありました。そんなシンプルで一本筋の通った生き方が、たまらなくカッコいいですね。こんな男が、当時の日本にはいたのです。
「新選組副長が参謀府に用がありとすれば、斬り込みにゆくだけよ」
五稜郭の城門を出て、単騎、官軍の本丸に向かうところを長州部隊に見咎められ、平然とこう言い放つシーンは、とりわけシビれました。女性の描き方はイマイチですが、男の生き様と歴史の激動を合わせ鏡にして、ふたつながら描き切った傑作といえましょう。
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