自治体職員の読書ノート

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2748冊目】芥川龍之介『蜘蛛の糸・杜子春』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン70冊目。


蜘蛛の糸」「犬と笛」「蜜柑」「魔術」「杜子春」「アグニの神」「トロッコ」「仙人」「猿蟹合戦」「白」を収録。芥川といえばこの作品、と誰もが思うであろう短編が揃っています(これに「羅生門」「芋粥」「鼻」が加われば、まさに芥川入門書ですね)。


子どもの頃は「蜘蛛の糸」「杜子春」「魔術」のような、寓話のような作品が好きでしたが、今読むと、「蜜柑」「トロッコ」のような作品が気になります。どちらも子どもが登場するため、少年少女むきの作品と思えますが、その味わいは大人になってからのほうがよくわかります。


「蜜柑」はなんといっても、踏切で宙を舞う蜜柑のビジュアルが素晴らしい。その瞬間、目の前の「小娘」の印象がガラリと変わるところが鮮やかです。「トロッコ」は、夕暮れ時、家から遠くに来てしまった子供心の描写が見事ですね。夕闇の中、遠くに家々の灯りが見えてきた時の安堵感ときたら! そして、その時の子どもが大人になって、当時のことをふと思い出すのです。「塵労に疲れた彼の前には今でもやはりその時のように、薄暗い藪や坂のある路が、細細と一すじ断続している」というラストも含め、これはやはりカンペキな作品なのであります。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!