自治体職員の読書ノート

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2749冊目】H・P・ラヴクラフト『インスマスの影 クトゥルー神話傑作選』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン71冊目。


創元推理文庫の全6巻(現在は全7巻)、黒一色に不気味なイラストの『ラヴクラフト全集』にハマったのは、中学生から高校生の頃でした。他のどんな小説とも違う、独特すぎる世界観とそれを支える異様な文章は、自分を特別だと思いたくてしょうがなかった当時の自分にぴったりだったのでしょう。本書に収録された「インスマスの影」や「クトゥルーの呼び声」を読むと、当時のことをいろいろ思い出します。ちなみにその頃はクトゥルーは「クトゥルフ」、ヨグ・ソトホートは「ヨグ・ソトース」、ル・リエーは「ルルイエ」、ユッグゴトフは「ユゴス」、深海のものらは「深きものども」でした。ああ、懐かしい。


とはいえ今読んでもなお、ラヴクラフトの小説世界の異様さは類例がありません。極端に会話が少なく、「名状しがたい」「冒瀆的な」といった大仰な形容詞がぴったりのゴシックな文章。宇宙の外側や海底都市からやってくる「旧支配者」の恐怖だけをひたすら綴る、執念にも似た作品の数々。後に多くのフォロワーを生んだ「クトゥルー神話」の世界ですが、やはり本家ラヴクラフトの作品は格別です。はっきり言って、小説としては決して上手いものではありませんが、それがまた妙にクセになるのです。


唯一、新潮社に不満があるとすれば、もう一冊刊行された『狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選』ではなく、本書のほうが「新潮文庫100冊」に採録されたことでしょうか。なんといっても「狂気の山脈にて」こそ、ラヴクラフト作品のベストだと思ってますので。本書が気に入った方は、ぜひもう一冊のほうもお読みください。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!