hachiroetoの読書ノート

この世の片隅でこっそり書き続けています。一応自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2727冊目】遠藤周作『沈黙』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン49冊目。


内容は説明不要でしょう。キリシタン禁制下の江戸時代を舞台に、情熱あふれる若きポルトガル人宣教師が棄教するまでを描いた作品です。マーティン・スコセッシの映画も話題になりましたね。


主人公が外国人、それを拷問にかけるのが日本人という「配役」が、日本の小説としては異色ですが、本書のテーマはもっと深いところにあります。それはタイトルにも示されているとおり、神の「沈黙」です。


悲惨な目に遭う人々を前に、なぜ神は沈黙しているのか。それは『ヨブ記』から『カラマーゾフの兄弟』におけるイヴァンの問いに至るまで、西洋の宗教と社会を貫く大問題です。それをクリスチャンとはいえ、日本人の作家が正面から取り上げ、描き切ったことに驚きます。


ただ、本書のクライマックスは「踏絵」のキリストが語りかけてくるシーンなのですが、私にはこのラストはいささか安易に思えました。やはり、ここは最後まで「神の沈黙」を貫いてほしかった。神の沈黙という大テーマに、キリスト者でもある著者は耐えきれなかったのでしょうか。


あと、本書の影のキーパーソンは、キチジローであると思います。弱くて卑劣で臆病なキチジローこそ人間そのものであり、まさしくもうひとりのユダなのですね。キリストが最後にユダにかけた言葉の意味が、本書を貫くもう一本の糸になっています。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!