【2742冊目】一條次郎『レプリカたちの夜』
「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン64冊目。
とてもヘンである。そして忘れがたい。ちょっと類をみない小説だ。
夜中の工場にあらわれるシロクマ。姿を消す工場長。自分自身のレプリカ。頭がターンテーブルになっているカッパ。ぷりんぷりん音頭を踊るうちに溶けてしまう女性。次から次へと登場するシュールでミステリアスな状況。その中に、主人公どころか物語ごと巻き込まれていく。
シュールなのに文章が読みやすいので、理解しがたい状況でも、読者の頭の中にあざやかにイメージが浮かぶ。これは新時代のカフカか安部公房か、ブルガーコフかデヴィッド・リンチか。いずれにせよデビュー作でこのクオリティとは、これはとんでもない才能。鬼才と呼ぶにふさわしい。個人的にはうみみずの展開するディープな人間=動物論が面白かった。
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