自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2743冊目】NHKスペシャル取材班『超常現象 科学者たちの挑戦』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン65冊目。


幽霊に死後の世界。生まれ変わりにスプーン曲げ。透視能力にテレパシー。「超常現象」とか「超能力」といわれるモノには、どこか胡散臭さがつきまとう。


超常現象を扱うテレビ番組の多くがこれまで取ってきたスタンスは、超常現象があるものとして扱うか、完全否定するかのどちらかだった。だが、本書の元となったNHKスペシャルは、そのどちらにも与しない。もちろん、生まれ変わりや幽霊についての話を集めたり、科学的な検証を試みたりはしている。だがその最終的な結論は「今のところはわからない」というものなのだ。


この結論は、はっきりいってテレビ受けする結論ではない。観る人の知的水準がもっとも問われるからだ。特に、スポンサーの意向に左右される民放テレビ局ではありえないだろう。こういう番組をしっかり作れるところに、NHKの存在意義があるのだが、その意味で、くだんの番組は公共放送としての責任をしっかり果たしたといえるだろう。


それにしても、本書に登場するエピソードはひとつひとつがやたらに面白い。エディンバラでの前世の記憶を語り始める日本の男の子の話とか、CIAユリ・ゲラーの超能力を本気で検証しようとしていたとか、そもそもアメリカとソ連の超能力者による「透視合戦」が本当に行われていたとか、7万人が集まる大イベントのクライマックスで、絶対に外部の影響を受けないはずの乱数製造機に偏りが生まれたとか、まあとにかく、インチキと片付けるにはリアルすぎる話題のオンパレードなのだ。


ここまでいろんな事例を集めつつ、それでも超常現象は「あるかどうかわからない」と結論づけるNHKのスタッフの知的誠実さには、本当に頭が下がる。今後の議論の基準点として、超常現象の否定派も肯定派も、一度は読んでおくべき一冊だ。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!