自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2731冊目】池谷裕二『受験脳の作り方』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン53冊目。


タイトルからは、胡散臭い「脳トレ本」みたいに見えますが、内容は一般に言われている勉強法を脳科学の視点から検証するという、たいへんまっとうなもの。それも、安易なノウハウではなく、むしろ王道といわれる勉強法に裏付けを与えるものになっています。


例えば、記憶を定着させるには反復を繰り返すしかないこと(「成績がよい人は、忘れても忘れてもめげずに、海馬に繰り返し繰り返し情報を送り続けている努力家だと言えます」(p.39))、特にアウトプットの反復が大事であること(「海馬の立場から言えば、『この情報はこれほど使用する機会が多いのか、ならば覚えなければ』と判断する』(p.78))、一度決めた参考書は変えないこと(「復習は同じ内容の学習を繰り返すことが肝心です」(p.70))など。特に、一つづつ段階を踏んだほうが結果的に早道であること(いわゆるスモールステップ)や、丸暗記ではなく応用可能な「方法記憶」をすべきこと、などの指摘は大切です。


ちなみにこの方法記憶に関連して驚いたのは、著者が「九九」をほとんど覚えていないという「告白」でした。そのかわりに、どんな掛け算でも、何種類かの簡単な暗算を組み合わせて、瞬時に答えを出しているそう。それでも東大大学院で博士号が取れるのですから、確かに丸暗記はしなくていいのかもしれませんが、それにしてもびっくりです。


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