自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2307冊目】澁谷智子『ヤングケアラー』

 

 

ヤングケアラーとは、家族の介護を担う18歳未満の子どもをいう。え、そんな子がいるの? と思われたかもしれないが、福祉の現場に身を置いていると、けっこういるのである。精神疾患の親に代わり認知症の祖母を介護する中学生、肢体不自由の父親に代わり買い物や料理をする小学生、知的障害の姉と共に母の帰りを待つ高校生。そういう家庭にはなるべくサービスを入れるようにするのであるが、なかなか難しい家庭も多く、うまくいかないこともある。まあ、これは私の知る範囲の話。

本書はそんなヤングケアラーの実態をまとめた一冊だ。先進的な取り組みを行う南魚沼市藤沢市、国ぐるみで課題解決に取り組んでいるイギリスなどの事例を踏まえつつ、あくまでケアを担う子どもにフォーカスし、その実情をかなり深いところまで掘り下げている。

南魚沼市の研修会で提示された「子どもがケアを担うことに対して、どのような態度で関わることが正しい姿だと思いますか?」との問いに対する答えが印象的。回答者は次の3つの選択肢を提示したという。あなたなら、どれを選ぶべきだと思いますか?

 

(1) 子どもがケアを担わないよう、家族・地域に働きかける。
(2) 子どもがケアを担えるように、教育する・能力を伸ばす。
(3) 子どもがケアを担うことから逃げるように働きかける。

 

 

 

(1)は理想的だが、それができないから子どもに負担がかかっている、というケースも多い。(2)を主張する人は、ケアも人生経験のひとつとして必要だと思っているのかもしれないが、そのため学校に行けなかったり夜寝られなかったりすると、その子の人生自体がケアに喰われてしまう。(3)は、本書では「一時的に離れる機会を作る」という意味合いで紹介されているが、個人的には、実際に逃げてしまう/逃がしてしまうのも一手なのではないかと思う。本書のどこかに書いてあったが、ケアサービスを入れる際には、その子どもが「いない」前提で入れていくことが必要だ。

藤沢市の事例では「これまで『困った子』と扱われてきた子どもたちを『困っている子なんだ』という視点でサポート」というくだりが印象に残った。実際、ケアを担う子どもたちは、学校に遅れる、宿題をしてこない、忘れ物が多い、学校を頻繁に休んだり抜けだしたりすることから「困った子」「問題児」とみられることが多い。そのように周囲が接すると、子どもは余計に介護のことを言いづらくなる。学校などがその子の状況を把握し、「指導」ではなく「支援」につなぐことができるかが問われている。ヘルパー事業所などの公的ケア提供側からの情報提供も重要だ。

ヤングケアラーたちが集まる「たまり場」「相談の場」も重要だ。この点ではイギリスの取組みが参考になるだろう。今ならネットを使うことも考えてよさそうだ。ヤングケアラーという言葉がもっと定着し、そういう実態があることが広く知られ、そしていずれは、ヤングケアラーが存在しない社会になってほしいものである。