【2591冊目】 前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』
書店で表紙を見たときは、ちょっとヤバい人なんじゃないかと思ったけど、
読んでみたら、わりとまっとうな「バッタ研究記」でした。
ふざけて見えるけど、この著者はけっこうマジメで熱心な昆虫学者なのです(ポスドクで就職がかかっている、ということもあるでしょうが)
だいたい、バッタ研究の重要性といっても、日本にいるとあまりピンときませんが、
著者が研究するサバクトビバッタは、アフリカではたびたび大発生して農作物を食い尽くします。
数百億匹のバッタによって東京都と同じくらいの面積が覆い尽くされ、しかも一日100km以上を移動するというから、すさまじいものです。
著者は当初、実験室の中で飼育したバッタを相手に研究をしていたようですが、
一念発起してサバクトビバッタのいるアフリカのモーリタニアに飛び込みます。
本書はその、モーリタニアでの研究と生活の日々を綴った一冊。
とはいえ、年がら年中バッタが大発生するわけではなく、特に著者の行った時は記録的にバッタの大発生が少なかったようです。
そこで、方向転換してゴミムシダマシという別の昆虫の調査をしたり、
野生のハリネズミを飼ったり、
なぜかフランスにまで飛んで、尊敬してやまないファーブルが「昆虫記」を書いたという屋敷を訪れたりします。
しかし、いよいよモーリタニアでもバッタの大群が出現します。著者も現場に急行、緑色の全身タイツに身を包み、大群の前に身を投げ出して言うのです。
「さあ、むさぼり喰うがよい」
・・・や、やっぱりヤバい人かも。