【2755冊目】寮美千子編『空が青いから白をえらんだのです』
「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン77冊目。
少年刑務所の受刑者が書いた詩を集めた一冊です。
巻末にある編者の文章「詩の力 場の力」を最初に読むことをオススメします。詩を書くこと、書いた詩を褒められることを通して、罪を犯した少年たちがどのように変わっていったかが書かれています。
いつもふんぞり返っていたのに、俳句を褒められたことがきっかけで、身を乗り出すような姿勢で話を聞くようになったO君。
自傷傾向があり精神的に不安定だったけど、妄想や空想をノートに書くことで落ち着き、人の相談を受けるまでになったK君。
もちろん、少しのきっかけで変わるということは、また簡単に元に戻ってしまう可能性がある、ということでもあります。でも、それまでめったになかった「褒められる」「認められる」という経験が、根本的にその人を変えるということもあるでしょう。
では、どんな少年たちが、どんな詩を書いたのでしょうか。最初に気づくのは、「お母さん」について書かれたものが多いこと。それも、感謝の気持ちを伝えるものと、辛かった気持ちを吐露するものに分かれるようです。父親に殴られる母親を守れなかったことを書いている詩も多く、胸が痛みます。
書くことがないなら、好きな色について書くことになっていたそうです。そのため、本書には「色」をテーマにした詩がたくさんあります。その中でも感心したのは、次の詩でした。
すきな色
ぼくのすきな色は
青色です
つぎにすきな色は
赤色です
手を抜いて、いい加減に書いたんじゃないかと思われるかもしれませんが、そうであったとしても、ここには詩の本源、本質のようなものが剥き出しになっているように思います。たとえば相田みつをがこう書いたら、みんな絶賛するんじゃないですか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!