【2728冊目】齋藤孝『孤独のチカラ』
「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン50冊目。
さて、本書はまことにつまらない本でした。まあ、著者の本は『声に出して読みたい日本語』も『読書力』もイマイチでしたので、あまり期待はしていなかったのですが、それにしても本書がなぜ名だたる新潮文庫の名著を押しのけ、100冊のうちの1冊に選ばれたのか、私にはよくわかりません。
孤独が人間にとって大事なものだ、という前提は同感です。しかし「多くの人に、孤独に対してそのようなポジティブでクリエイティブなイメージをもってもらいたい」(p.39-40)と言われると、いやいや、ちょっと待って、ポジティブとかクリエイティブとかいうような浮ついた言葉で孤独を語りなさんな、と言いたくなってしまいます。
しかもその後には「誰だって人から『ああ、この人は奥が深いな』『輝いているな』と思われるのはうれしいに違いないからだ」と続くのですから、何をかいわんや、です。この人にとって、孤独とは人から褒められたりモテたりするためのポーズにすぎないのでしょうか。
古今東西の文学作品や哲学書からの引用が散りばめられていますが、そこから引き出される考察は「孤独は自己と向き合うために必要」「最近の若者は群れてばかりいて孤独と向き合っていない」「孤独な時間と人付き合いのバランスが大事」など、どこかで聞いたことのあるようなことばかり。まさしく陳腐そのもののオンパレードで、一つとして新たな発見のない一冊でした。
むしろ本書の「解説」で小池龍之介氏が書かれている「本来、すべての人間は孤独」「動物も生きとし生けるものは、すべて孤独の中に生きている」という言葉が、はるかに核心を突いているように思います。著者が200ページ近くの文章を綴ってついに到達できなかった孤独の本質に、小池氏はわずか10ページ弱の解説の中で言及している。このことの意味を、もう一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。
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