【2745冊目】松岡圭祐『ミッキーマウスの憂鬱』
「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン67冊目。
ディズニーランドが舞台のお仕事小説という、まあ、こういう機会がなければ絶対読まなかったであろう小説でした。ディズニーランドの「表と裏」の対比がひとつの読みどころになっているのですが、そもそも私自身、ディズニー愛がほとんどゼロ、ディズニー映画もディズニーランドもできれば避けて通りたいと思っている人間なので、そのあたりは少々シラケ気味。まあ、誰もがディズニーランドを「夢と魔法の王国」だと思っているワケじゃありませんのでね。
とはいえ、客観的に見れば、お仕事小説としてはなかなかよくできています。正社員と準社員の差別、保身と責任転嫁、現場を知らないエリートなど、お仕事小説の定番テーマをうまく盛り込みつつ、ミッキーの着ぐるみの紛失という意想外の事件で一挙に物語をドライブしています。ラストはやや出来過ぎとも思えますが、まあ、半沢直樹か水戸黄門だと思えば良いでしょう。
著者は「千里眼」シリーズなどミステリ系のイメージが強かったのですが、こういうさわやか系青春小説もうまいですね。アンチ・ディズニー派の私でも、わずか3日のあいだに見せてくれた後藤クンの成長ぶりには、思わず胸が熱くなってしまいました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!