hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2710冊目】安部公房『砂の女』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン32冊目。


砂の穴に埋もれていく家に閉じ込められた男の話です。こちらもずいぶん久しぶりの再読。


いろいろ深読みができそうな話ではあります。部落のために犠牲になって砂を掻き出す男の姿には、集団のために犠牲となる個人の姿が象徴されているとか、そこに暮らす諦め切った表情の女には、体制に従順な国民の姿である、とか。


ただ、今回読んで感じ入ったのは、徹底した「砂」の描写のすごさでした。肌にまとわりつく砂粒の不快なざらつき、少しずつ降り積もってくる不定形の砂の不気味さが、ほとんど肌感覚レベルで迫ってきます。その「砂の感覚」が小説全体を覆い尽くして、異様なざらついた読後感を与えているように思われます。こんな小説、なかなか他にはありません。


「平均1/8m.m.という以外には、自分自身の形しか持っていない砂・・・・・・だが、この無形の破壊力に立ち向かえるものなど、なに一つありはしないのだ・・・・・・あるいは、形態を持たないということこそ、力の最高の表現なのではあるまいか・・・・・・」(p.37)


最後までお読みいただき、ありがとうございました!