hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2703冊目】川端康成『雪国』


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン25冊目。


例によって若かりし頃に読みましたが、ピンと来なかった一冊です。むしろ「片腕」や「眠れる美女」の妖しさのほうが分かりやすく、惹かれるものがありました。


再読して感じたのは、これは「大人のための名作」であるということ。仕事もせず親の遺産で暮らしながら超然を気取る島村と、芸者のタマゴとして働き、苦労を重ねつつ奔放で開けっ広げな性格の駒子のコントラスト。そして、そんな島村に惹かれていく駒子の切ない心情は、やはりそれなりに年齢を重ねてはじめて胸を打つものがあります。


そしてやはり、見事なのはその描写です。例えば駒子を見たときの印象は「足指の裏の窪みまできれいであろうと思われた」。葉子の声を「悲しいほど美しい声であった。高い響きのまま夜の雪から木魂(こだま)して来そうだった」。小説から音が聞こえてきそうです。自然描写も素晴らしいのですが、こちらは長くなるので、ひとつだけ引用しておきましょう。


「裸の天の河は夜の大地を素肌で巻こうとして、直ぐそこに降りて来ている。恐ろしい艶めかしさだ。島村は自分の小さい影が地上から逆に天の河へ写っていそうに感じた。天の河にいっぱいの星が一つ一つ見えるばかりでなく、ところどころ光雲の銀砂子も一粒一粒見えるほど澄み渡り、しかも天の河の底無しの深さが視線を吸い込んで行った」(p.163)


こんなにエロチックかつ壮大な天の河の描写が、かつてあったでしょうか。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!