hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2702冊目】和田竜『村上海賊の娘』



 


新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン24冊目。


100冊」に取り上げられているのは第1巻ですが、こんな面白い小説を1巻だけで中断できるワケがない。全4巻を一気に読み切ってしまいました。


織田と毛利が鎬をけずる戦国時代の瀬戸内海にあって独自の存在感を示していた海賊衆「村上海賊」。そのひとつ、能島村上の当主の娘「景」(きょう)を主人公に、知られざる戦国時代の一幕を描く時代小説です。


とにかく登場人物が魅力的です。主人公の「巨眼で鼻が通った」当時としては異相の景は、武勇に優れ正義感に燃える女性で、まるっきり少年マンガの主人公です。他にも、敵役である真鍋海賊の真鍋七五三兵衛をはじめ、毛利家の軍人宗勝にイケメンの就英、鉄砲衆の雑賀孫市など、強烈な個性のキャラ揃い。


中でも、物語の中で大きく変化した人物といえば、景の弟で臆病者として登場しながらも、後に武将として名をなしたという景親でしょう。やはり慎重派ながら最後は漢気に目覚め戦いに身を投じる沼間義清も忘れられません。堅物の兄、元吉が実は好戦的な戦上手というのも面白い。


そして、本書の読みどころといえばなんといっても合戦シーンのリアルさです。前半での織田の本願寺攻めでは信長自らが加わり、その人間離れした悪魔的な強さがたっぷり描かれます。そして、4巻目の大半を占める壮絶な海戦シーン。投げ銛に焙烙玉といった海賊ならではの武器にすさまじい戦略の駆け引き。中でもラストを飾る景と七五三兵衛の戦闘シーンは圧巻です。


しかもこの物語、ほとんどが史実に基づいており、徹底した史料調査を踏まえているというから驚きます。景自身は「女」としてしか史料には登場しないようですが、それを主役に引っ張り上げ、活き活きと描いたのは著者の手腕でしょう。


和田竜の本は初読でしたが、歴史エンタメとして極上でした。柴田錬三郎池波正太郎を継ぐ書き手といっていいでしょう。寡作でもあるようですが、次回作が本当に楽しみです。あ、その前に『忍びの国』と『のぼうの城』を読まなくては。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!