【2698冊目】知念実希人『天久鷹央の推理カルテ』
「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン20冊目。
「泡」「人魂の原料」「不可視の胎児」「オーダーメイドの毒薬」が収められたメディカル・ミステリー短編集です。全体の印象をひとことで言えば、医療版シャーロック・ホームズ。それも、王道ど真ん中。
主人公の鷹央は、超人的な頭脳と膨大な知識がありながら超のつく変わり者で、人付き合いはお世辞にもうまいとは言えません。さすがにホームズと違ってヤク中ではありませんが、その代わり酒は底無し、食べるのはカレーと甘い物だけという超偏食。そして、姉の真鶴が大の苦手(とのことですが、この設定はあまり活きていません)。さらに、物語はワトソン役の小鳥遊(たかなし)の視点で語られますが、その役回りは、鷹央の推理についていけず、ひたすら振り回されるのみなのです。
短編メインのスピーディーな展開、鷹央がアクティブに動き回り、時には積極的に罠をかけたりするあたりもホームズっぽいですね。医学的な知識がベースなので、読者が謎解きに参加するのは難しく、むしろ展開を楽しむタイプの作品だと思います。オススメは、某有名ミステリを思わせつつ鮮やかに予想を裏切る「不可視の胎児」、ホームズばりの消去法推理が見事にハマる「オーダーメイドの毒薬」でしょうか。
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