自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2502冊目】網野善彦『日本中世の百姓と職能民』

 

日本中世の百姓と職能民 (平凡社ライブラリー)

日本中世の百姓と職能民 (平凡社ライブラリー)

  • 作者:網野 善彦
  • 発売日: 2003/06/09
  • メディア: 文庫
 

 

 

第1部「百姓」、第2部「職能民」の2部構成。論文を集成した一冊とのことで、一般向けというにはやや詳細で専門的なものも含まれている。

 

まずは「百姓」だが、百姓という言葉自体、差別的ということなのか今ではあまり使われない。使われたとしても「農民」のことで、年貢を納める以外は自給自足の生活をしていたと考えられがちだ。だが、著者によると、13世紀前半までの百姓は、自ら産した米や絹、布などを商品としてマーケット(「市庭」)で売却し、得た貨幣で生活に必要な品を購入していたという。そして、市庭にさまざまな品物を供給していたのが、手工業者や商人、あるいは廻船人といった職能民だった。われわれが思っているより、当時の社会はずっと相互交流があり、活気があったようなのだ。

 

ということで、次は「職能民」。ここでいう職能民には鍛冶や鋳物師といった専門技能職から巫女や傀儡師、遊女までが含まれるが、いずれも中世の日本では「聖なる存在」としての側面をもっていたというのがポイント。当時の彼らは定住地をもたず、いわば共同体の外部から訪れる存在だった。彼らがやってくる山や海といった外界は、人間の力が及ばない「聖なる地」であり、ゆえにそこから来る人々も神聖視されたのだ。さらに、彼らのもつ職能もまた人間離れしたものだった。彼らのルーツは、古代、大陸からやってきて技術を提供した渡来人ともいわれる。渡来人という「まれびと」こそ、聖なる存在であり、同時にアウトサイダーであった職能民の元祖なのだろう。

 

本書はほかにも職能民を束ね、プロデュースした「勧進上人」の存在や、規範を外れて活躍した「悪党」「海賊」の出現など、気になることがたくさん書かれているが、また、そのうち。読むたびにいろんな発見がありそうな一冊だ。