【2000冊目】網野善彦『無縁・公界・楽』

無縁・公界・楽―日本中世の自由と平和 (平凡社ライブラリー (150))
- 作者: 網野善彦
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1996/06
- メディア: 新書
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その1 「無縁」「公界」「楽」と呼ばれる場所の特質は、主従関係、親族関係等の世俗の縁と切れていることにあった。
その2 それは「寺院」「自治都市」「道路や橋」「市場(市庭)」「宿屋」などさまざまな場所にみられた。
その3 無縁の場は俗世間から切り離されているゆえに、特権的な避難所「アジール」として機能した。
その4 無縁・公界・楽を往来する人々の姿が、そこにはあった。それは商人であり、芸能民であり、職人であり、遊女であった。
その5 彼らは自由通行権を得て諸国を移動した。その背景には、天皇が無縁の場やその人々を支配するという構造があった。
その6 無縁の場は芸能が生まれる場であった。能や歌舞伎など、日本を代表する芸能や文化の多くが、無縁の場に出所した。
その7 無主・無縁の原理は、有主・有縁の原理と背中合わせの関係にある。そもそも、無主・無縁の原理が先行し、それによって有主・有縁の世界がはじめて成り立つのだ。
その8 そこは死者や神々と関わる場でもあった。そこは境界であり、彼岸と此岸をつなぐ場であった。
その9 こうした「無縁の場」は世界的に見られる。特に「市」にその傾向が顕著である。交易は外との間に行われるものであり、だからこそ無縁の場においてひらかれた。
その10 無縁の世界は人類普遍であり、その萌芽は子供たちの「エンガチョ」の遊びにさえみられる。むしろ無縁こそが人類の本来ではなかろうか。