自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2499冊目】福島香織『ウイグル人に何が起きているのか』

 

 

ナチス・ドイツユダヤ人大量虐殺が明らかになったのは、戦争が終わってからだった。もし戦時中からアウシュヴィッツの存在が知られていたら、当時の国際社会はどのように反応しただろうか。

仮定の話、ではない。それに匹敵するすさまじい民族浄化が、今まさに行われているからだ。舞台は中国、新疆ウイグル自治区。そこで遂行されているのは、単なる「民族弾圧」どころではない。本書の記述が本当であれば、中国はウイグルという民族、文化、伝統のすべてを消滅させようとしているとしか思えない。

無数の監視カメラに警察官。イスラム教徒であるウイグル人に、酒を飲ませ、豚肉を食べさせ、イスラム風の服も家屋も変えさせる。それも「笑顔で、自ら進んで」行わせるのである。もし嫌がるそぶりを見せたらどうなるか? 「再教育施設」に直行だ。

再教育施設と言えば聞こえは良いが、これがまさに強制収容所そのもの。テロリストと決めつけられ、激しい暴力を受け、寒い夜に水を掛けられたまま放置され、両手を吊るされて汚水タンクに首まで漬けられるといった拷問を受ける。

拷問をクリアしても、待っているのは「再教育」の日々だ。鎖でつながれ、朝5時から夜12時まで、再教育という名の洗脳を受け続ける。革命歌を1時間半も歌わされ、「私の人生があるのは党のおかげ」「ウイグル人に生まれてすみません」と繰り返し言わされる。決められたスローガンを暗唱できないと24時間にわたり真っ暗な独房に入れられたり、鉄の拷問椅子に縛り付けられる。毎週4~5人が部屋から呼び出され、そのまま二度と戻らない。怖いのは、入所時に血液と臓器適合の検査を受けさせられることだ。明確な証拠はないが、ウイグル人の臓器が売買の対象になっているという噂は絶えない。

こんな「再教育施設」に、国連の人種差別撤廃委員会によれば、最大200万人規模のムスリムが収容されているという。ウイグル人だけでも、その人数は100万人ともいわれている。中国に暮らすウイグル人、約1100万人の1割である。外国にいるウイグル人だって無事ではいられない。帰国命令が出され、滞在先の国によっては強制送還させられる。パスポートの更新のため本国に戻り、そのまま再教育施設に送り込まれる人もいるという。

本書は、日本でなかなか実態が伝えられることの少ない「現代のアウシュヴィッツ」のありようを告発する一冊だ。それも、ウイグル人漢人の確執の歴史を踏まえ、911によるイスラム教徒への逆風の影響などにも触れつつ、最近になって急激に「過激化」した背景にも言及しており、ややアンチ中国臭が強いきらいはあるが、非常に充実した内容となっている。

数年前に「ウイグルの母」と呼ばれるラビア・カーディルの自伝を読み、そこで書かれているウイグル人迫害のすさまじさに驚いたことがある。しかし本書を読む限り、残酷さはそのままに、中国の対ウイグル政策はよりシステマチックかつ徹底した民族浄化に突き進んでいるようだ。今の国際社会に、果たしてこの暴挙が止められるのか。世界第二位の経済大国によって、リアルタイムで行われているナチス・ドイツ級の虐殺に対して、世界は本当になすすべがないのだろうか。

 

 ラビア・カーディルの自伝はコチラ。

 

 

こちらもおすすめ。ぜひ一読を。