自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2489冊目】河合隼雄『家族関係を考える』

 

家族関係を考える (講談社現代新書)

家族関係を考える (講談社現代新書)

 

 

なんと40年ほど前に書かれた本。家庭内暴力や非行がクローズアップされている一方、今なら家族の「症状」として外せないであろうひきこもりや虐待、DVや毒親の問題などはあまり出てこないが、それにしても本書の指摘の大部分が今なお当てはまり、読んでいてうなずかされるのには驚く。

 

もっとも、著者によれば家族関係の問題は遠く日本やギリシアの神話にまで遡れるようであるから、40年などたいしたことはないのかもしれない。それほどに、家族の問題とは人間にとって普遍的なものであり、家族の形態は時代によって変われども、その抱える課題は変わらない。

 

家族とは、考えてみれば不思議なものである。家族関係を面倒くさがって仕事に逃避している親は、いずれ家族そのものから手痛いしっぺ返しを食らう。一方、家族に注ぐエネルギーは、かえってその人のエネルギーを充実させ、人生を充足させる。親密すぎる関係に絡め取られることもあるし、過度の「自立」がかえって空虚な孤独を生むこともある。

 

「家族はわれわれに実存的対決の場を用意するのである」と著者は本書の最後近くになって書く。そこにはマニュアルはなく、正解もない。模範的に見える家族が実は大きな破綻を抱えていることもあるし、家族の内部で起きたトラブルが、実は家族を修復することもある。家族ほど面白く、また奥深いものはない。