【2436冊目】久住昌之・谷口ジロー『孤独のグルメ』
今さらでてきたのかよ、と言われそうなグルメ系マンガ定番中の定番。久々に読み直したが、あらためて名作だと思う一方、これが実にユニークな一冊であることにも気づいた。だいたい「グルメ」と言いつつ、出てくるのが山谷の食堂、回転寿司、新幹線のシュウマイ弁当、神宮球場のウィンナーカレーにデパート屋上のうどんというのは、やはりどこか「ヘン」である。さらにそれを主人公の井之頭五郎がひたすら食べ続けるというのが、ある意味このマンガのもっとも妙なところ。
相方はいない。だいたい会話もほとんどない。ただひたすら、求道僧のごとく、店を探す、注文する、食べる順序を考える、実際に食べる。そう、本書では、かかる一連のプロセスが全部ドラマになっていて、そうか、「昼食を食べる」という行為もドラマになるんだ、と驚かされる。本書はその意味で、真に革命的なマンガだったのだ。