【2437冊目】ジョン・クラカワー『荒野へ』
裕福な家庭に育ち、大学を優秀な成績で卒業したクリス・マッカンドレスは、ヒッチハイクでアラスカを目指し、消息を絶った。預金はすべて寄付し、手持ちの現金も燃やし、ほとんど徒手空拳でアラスカの大自然の中に入った。そして4カ月後、打ち捨てられたバスの中で死んでいるのを発見されたのだ。
世間知らずの若者の無謀な挑戦と非難されたクリスの短い生涯を辿り、かつて自らも大自然の中で死にかけた経験を重ね合わせた著者は、世間一般とはまったく違う結論に至る。クリスの冒険は本当に失敗だったのか。彼は何をしようとしていたのか。死を望んでいたのか、それとも生を掴もうとしていたのか。
さまざまな人々の証言から照らされるクリスの旅は、読み手の胸を強く打つ。それはけっして、自暴自棄な自殺行為ではなかった。その答えを著者は読者に委ねる。それゆえに、本書は忘れがたく、読者の胸に刺さってくる。