自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2405冊目】長谷川祐子『「なぜ?」から始める現代アート』

 

「なぜ?」から始める現代アート (NHK出版新書)

「なぜ?」から始める現代アート (NHK出版新書)

 

 

 

東京都現代美術館チーフキュレーターによる、現代アート入門書。

現代アートというと、パッと見ただけでは訳がわからない、理解しがたいものが多く、私も含め敬遠している人も多いのではないか。だが、そこにはそのような表現が必要とされるだけの文脈があり、意図がある。本書は著名な現代アーティストの作品を取り上げ、その「文脈」と「意図」を明らかにする。

もっとも、これだけでは作品を頭で「理解する」だけになってしまい、あまりおもしろくない。本書はむしろ、豊富な現代アートの具体例から、「どこか気になる」作品を発見するのに使った方がいい。ちなみに私が本書で気になったのは、ブラジルの土着性全開のエリオ・オイチシカ「トロピカリア」、奇妙だけどどこか生物じみているエルネスト・ネト「リキッド・フィンガー・タッチ」など。


「不便になること、悪意をもたれてしまうこと、社会的なマナーにかなっていないこと、アートは、絶えずそのような両義性や矛盾を抱え込むものです。アートは自己批判しながら、前に進んで、新しいものになっていく。それが、新しい提案の原動力だと考えます」(p.164)

 

著者はこう書いているが、たしかにそうだろう。だが、それが理念的でありすぎると、頭でっかちになっていまい人に訴えかける力は弱くなる。あわせて、もっと生理的で、もっと感覚的で、もっと原始的な力が、アートには必要なのではなかろうか。