自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2461冊目】池上正樹『ルポひきこもり未満』

 

ルポ ひきこもり未満 レールから外れた人たち (集英社新書)

ルポ ひきこもり未満 レールから外れた人たち (集英社新書)

 

 

 紹介しようかどうしようか、最後まで迷った一冊。この「読書ノート」では、自分が手に取った本の半分くらいを紹介しているのだが、紹介しないことにした(紹介する価値ナシと判断した)本のほとんどは、そもそも読むのを途中でやめている。

ところがこの本は、何かありそうな気がして、最後までしっかり読んでしまった。出てくる事例がリアルで説得力があるので、読んでいてそれなりに引き込まれたためだ。ちなみに本書が取り上げるのは、非正規雇用、ひきこもり、生活保護等々、現代社会の片隅で困り果てている人々だ。

本書の良い点でもあり、混乱している点でもあるのは、カテゴライズやステレオタイプを極力拒否しようとしているところ。例えば「ひきこもり」とか「非正規雇用」という言葉のくくりをそのまま無批判に使うのではなく、そこからこぼれ落ちた人々に光を当てる。そのため、既存の枠組みから外れ、それまであまり注目されていなかったが、現代社会の狭間で苦境に置かれている人々がたくさん紹介されている。だから「ルポ」としては成功だと思うのだが、一方では、個別の事例がバラバラと並んでいるような印象になってしまい、だから何? と言いたくなるような散漫な読後感しか残らなかったのだ。

あるテーマや課題は、内部を包摂するとともに、その外部を排除する。たとえば「ひきこもり支援」を掲げた瞬間に「ひきこもり」と「非ひきこもり」は分断され、差別化される。そのことへの批判は本書でもたくさんなされているが、だがそもそも、ある事象に名をつける、とはそういうことではないのだろうか。あらゆる「支援を要する人」を、排除せず全員包摂するための仕組みができればよいのだが、どうやっても「スキマ」や「重複」はできてしまう。それは制度というものの宿命のようなものであり、もっと言えば、それこそが、そもそも言語というものがもつ本来的な機能なのだ。

なんだかずいぶん大きな話になってしまったが、このあたりの状況をなんとかしようとして生まれてきた分野横断的な支援の仕組みが、生活困窮者自立支援であったり、あるいは(本来の意味における)地域包括ケアというものであろう。本書に紹介されている、ひきこもり経験者を多く雇用している「エリア警備」の例などは、まさに地域のあるべき姿の一つを示してくれているように思われる。あれ? そう考えると、やっぱり読んでよかったのかな?