自治体職員の読書ノート

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【445冊目】金子勝・高端正幸編著「地域切り捨て」

地域切り捨て―生きていけない現実

地域切り捨て―生きていけない現実

地方財政に詳しい編著者2人と、若手ジャーナリストの取材のコラボレーションで、地方の衰退と崩壊を生々しく描き出した本である。

夕張市の破綻に始まり、土地開発公社に潜む「含み損」の問題、暴走する市町村合併施策、介護保険や地域医療の崩壊など、日本中で起きている地方行政や地方財政の崩壊現象を、トピックを絞りながらもきわめて克明に解説している。その背後にあるのは、中曽根内閣以来の「民活」「民営化」「小さな政府」路線のかげで地方にツケ回しを重ね、交付税補助金をタテに国家財政の無規律の尻拭いを地方に押し付けてきた国家官僚の醜悪な姿である。

もちろん「すべて国が悪い」などと単純化できる問題ではないが、それにしても、本書から読み取れる限りでは、今の地方が抱える問題のほとんどが、その場しのぎで長期的な展望もなければ、現場も知らず知ろうとすらしない国の姿勢に起因していると言わざるをえない。先日、財政再建団体となる可能性がある「候補自治体」のリストが公表されたが、本書の文脈から見ればこれは、国の場当たり的な誘導と「ハシゴ外し」の犠牲者のリストとしか見えてこない。交付税補助金でさんざん地方を誘導し、国家の失政の尻拭いをさせておきながら、いざとなると交付税を一方的に削減し、強圧的に合併を迫る。介護も医療も、理念も生存権も捨てて制度自体の護持に汲々としている。本書は、ここ20年来のそうした「政府の犯罪」を暴く告発書とすらいえるように思う。