自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【609冊目】神野直彦編著「地方財政改革」

自治体改革 (8) (自治体改革 第 8巻)

自治体改革 (8) (自治体改革 第 8巻)

「自治体改革」シリーズ第8巻。地方交付税や国庫補助金など国から地方への財政移転、地方の財政管理のあり方、それぞれについて現状とその問題点、そして改革の方向性を示した一冊である。

現在の地方財政制度のありようを一言で言えば「国から地方」である。国は地方財政計画をもとに地方への分配を決定し、さらに国庫補助金交付税の算定方式をめぐってあからさまな政策誘導が行われる。不況下ではさらに景気対策に地方が動員され、国の施策によって自治体の財政的な負担は強まる一方となる(昨今の景気対策をみても、ほとんど同じ図式が繰り返されている)。しかも国は交付税の切り下げというフリーハンドを握り、国の財政状態に地方の財政が従属する状態となってしまっている。

本書でさまざまに提言されている改革の方向は、これをすべてひっくり返し、「地方から国」に変えることである。地方は財政の透明性を高め、住民がその財政状態を十分に把握できるようにする。その上で、いわば住民の自己決定において、「高い税負担−充実した施策」「低い税負担−最低限の施策」のいずれを選択するか決めていく。ただし、ナショナル・ミニマムにあたる部分は国が交付税により確実に保障する。

この逆転を実現するために必要となるのが、財務状態の開示の前提となる複式簿記や発生主義会計などのいわゆる公会計改革であり、地方税に関する、とりわけ税率決定権を大幅に地方に委ねること、そして地方交付税制度から政策誘導的な要素を取り除き、純粋なナショナル・ミニマムの確保に徹させることである。その上で、個々の自治体が総合計画に記載された事業と予算を密接にリンクさせ、その策定プロセスに住民参画を取り入れていくことが必要となってくる。

本書は地方財政の現状を踏まえた上で、こうした改革への道筋をテーマごとに具体的に示すものとなっている。細かい議論というよりは、大きな視点から地方財政のグランドデザインを描き、現状との差をあぶりだした一冊。