自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【606冊目】肥沼位昌「図解よくわかる自治体財政のしくみ」【607冊目】林宜嗣「地方財政」


図解 よくわかる自治体財政のしくみ

図解 よくわかる自治体財政のしくみ

地方財政 新版 (有斐閣ブックス)

地方財政 新版 (有斐閣ブックス)

地方財政に関する「入門書」と「基本書」。いずれも非常によくできたテキストである。

「図解よくわかる…」は、見開きの単位で図表やイラストをたっぷり使った、分かりやすさ重視の一冊。著者は所沢市の職員で、現在は環境関係の部署におられるようだが、財政課在籍時代に培った経験や知識が本書に生きている。後述するようにいろいろなアクターがからんできてややこしいことこの上ない自治体財政の制度と現状を明快に解説した本。しかし、単なる解説の羅列ではなく、自治体財政の現場を知っている人ならではの問題意識が時折光るのがカッコイイです。

一方、「地方財政」のほうは、コンパクトだがかなりしっかりした内容。経済学や財政学の理論を踏まえつつ、こちらも網羅的に地方財政の理論と現状を解説している。データが豊富で、またその「使い方」が実に的確。地方財政の現状を俯瞰するには最適の一冊だと思う。

それにしても、日本の地方財政(あるいは自治体財政)制度の「出来」はどうなのだろうか。

財政制度自体は、意外とシンプルにできている。歳入は税と交付税補助金などの財政移転、それと地方債(借金)が主なもの。歳出は目的別、性質別にいろいろ分けられるものの、内容はどれも身近なものばかりである。しかし、この制度が実はいろんな意味でがんじがらめになってしまっている。

まず、歳出に関する自由度が地方分権の推進によってある程度(あくまで「ある程度」だが)増えたのに対して、歳入に関する自由度が格段に低い。地方債が許可制から同意制になったり、法定外税の規制が緩和されたりしてはいるものの、なにぶんにも基幹税である住民税や固定資産税などの地方税が、地方税法によってがちがちに縛られてしまっている。制限税率や標準税率の規定、税率による地方債発行の制約など、まったく大きなお世話である。こと税金に関しては、地方分権は無きに等しいと言ってよいように思われる。

さらにひどいのが地方交付税や国庫補助金である。地方交付税制度自体は「世界でも有数の精緻さ」をもっているらしいが、その算定方式に政策誘導的な要素が山ほど盛り込まれ、本来の意義からかけ離れたものになってしまっている。

また、国庫支出金については今のような「薄く広く」の超過負担前提の制度をなんとかしてもらいたいものである。生活保護や義務教育などのナショナル・ミニマムに関する部分は全額を国庫支出金で賄うなど、重点化とメリハリが必要であるように思う。奨励的補助金については、「地方財政」で指摘されているとおり、自治体の自己決定の問題である。ただ、それを住民の側からチェックする仕組みがどこかで必要になってくるのではないだろうか。