自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【50冊目】坂弘二「地方公務員制度」

地方公務員制度 (地方公務員新研修選書)

地方公務員制度 (地方公務員新研修選書)

以前ご紹介した「地方自治制度」と同じく、「地方公務員新研修選書」シリーズの一冊である。このシリーズ、要するに自治大学校の研修用教材であり、言い換えれば、総務省自治省)・自治大学校というラインからのテキストである。本書の著者も自治省出身者。

だからというわけではないが、なるほど、国の官僚というのは地方行政や地方公務員をこう見ているのか、ということが、本書からはびしびし伝わってくる。それは要するに、地方は国の見解に従っておればよいのだという昔ながらの官僚意識であり、「行政実例」に代表される国の見解をほとんど法源のごとく扱う無神経さである。たかが○○局○○課長の名による回答を、最高裁判例と同列に紹介する神経も理解できない。だいたい、行政実例の物言い自体、何であんなに偉そうで高飛車なのだろうか。関係ないけど。

驚倒したのは、最初の方で、地方公務員関係は特別権力関係に規律される、と当然のように言い切っていたことである。あの、特別権力関係って、憲法学の世界では、安易かつ包括的に人権を制約する理論として、存在自体が問題視されていたように記憶しているんですが。それを議論の対象にするどころか、当然の前提にするのは、いくらなんでもちょっと時代錯誤なのではなかろうか。この方、どうも時代が昭和で止まっているように思える。少なくとも地方自治法の大改正より前の時代なのは確かだろう。

まあ、基本的な知識は要領よく押さえてあるし、要所要所では図表を使って分かりやすくしてくれてもいる。そのあたりはよく出来たテキストであり、さすが自治大学校というべきであろう。あとは、霞ヶ関の常識ではなく、世の中の常識に照らした議論がなされていれば言うことはないんだが・・・・・・。