hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2610冊目】村田沙耶香『コンビニ人間』

死んだ小鳥を前にみんなが泣いているのに「食べちゃおう」と提案するような、男の子の喧嘩を止めるためにスコップで頭を殴るような、そんな「規格外」の女の子だった古倉恵子が自分の居場所を見つけたのは、コンビニのアルバイト。「人間」のなかでは居場所がない彼女は、「コンビニ人間」となることで、やっとこの世の中で生きることができたのだ。


普通には生きられない変人中の変人である古倉が居場所を見つけたのが、ある種「普通」の極みとも思えるコンビニであるところがおもしろい。だが、規格化されたマニュアル、パターン化された日々があるからこそ生きていけるという人は、実は決して少なくないように思う。実は、世の中には案外たくさんの「○○人間」がいて、そこにはまりこむことで居場所を見つけているかもしれないのだ。


一方、社会に居場所がない、はまり込む場所がない人もいる。本書でいえば白羽がそうだろう。自分はコンビニのバイトなのに店長を「社畜」「社会の底辺」と見下すような、バイトは「婚活」と公言しつつ客にストーカーするような男。そんな、どこに行っても不満と劣等感をぶちまけるしかない白取を、古倉はなぜか自分と同棲させる。


本書は、生きにくさを抱えた人にとっての「普通の人たち」の圧力を描いた小説でもある。「普通ではない」人の目から照らされた彼らの姿はグロテスクでさえあるが、次の瞬間、それが自分自身の似姿であることに気づいて愕然とする。


「普通」とは暴力なのだ。異端を矯正し、排除し、あるいは修復しようとする巨大なローラーのようなものなのだ。それを知っているからこそ、「普通でない人」は、コンビニ人間となることで制服の陰に隠れるか、白羽のようにひたすら逃げ回るしかなくなってしまうのである。