自治体職員の読書ノート

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2700冊目】森見登美彦『太陽の塔』

 

新潮文庫1002021」全冊読破キャンペーン22冊目。


モリミーこと森見登美彦のデビュー作。男ばかりで固まって悶々とし、アホな計画にうつつを抜かしつつ、実は誰よりもナイーブで、失恋に傷つき、必死に自分を守ろうとする。そんな主人公らは、まるで過去の自分を見ているかのようです。


「男汁」あふれるこの作品には、だから女性はほとんど出てきません。主人公の元恋人の水尾さんもそうですし、「邪眼」の持ち主として最初の方で強烈に登場する植村嬢も、その後はほとんど出てきません。徹頭徹尾、これは煮え煮えで妄想にこじれまくった愚かな男たちのための物語なのです。


そんな中、奇妙で鮮烈な印象を残すのが、巨大な「太陽の塔」のイメージと、終わりの方で出てくる、夢の中、夜の京都を走る叡山電車のシーン。このあたりはむしろ近作の『夜行』につながる幻想的な場面として、忘れがたいものがあります。この作品がなんと「日本ファンタジーノベル大賞」を受賞したのは、そんな幻想的な光景のためでしょうか。それとも、大学生男子の妄想的生態が、ある種のファンタジーであると評価されたためなのでしょうか。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!