hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2677冊目】ジョージ・フリードマン『100年予測』


地政学の本が、書店でも最近目立つようになってきた。内容は玉石混淆だが、地政学のおもしろさと凄みを知りたければ、ジョージ・フリードマンをオススメしたい。アメリカで「影のCIA」の異名をもつ情報分析のプロである。


2009年に刊行された本書は、2080年までの将来予測を行っている。100年後とまではいかないが、おおむね70年後だ。


これがどれくらい大変なことか考えたければ、今から70年前、1951年のことを考えてみるといい。日本はまだGHQの占領下にあり、前年には朝鮮戦争が勃発。9月にはサンフランシスコ講和条約が署名された。この頃にソ連の崩壊やEUの誕生、インターネットの誕生や日本の高度成長と没落を誰が予想できただろう。


そう考えれば、本書の予想もそれほど荒唐無稽ではない、のかもしれないが、それでもやはり読むと驚く。まあ、アメリカ一強時代の到来はいいとして、まず2020年頃にロシアが自壊する(繰り返すが2009年の予想なので)。2030年頃には中国が国内の分裂と経済の低迷で弱体化。そしてなんと2040年から2050年、人口減と経済的窮地、そして資源の不足に悩む日本が軍事強国として蘇り、トルコと連合してアメリカに戦争を挑むというのである。


さらに続ければこの戦争は宇宙覇権をめぐる戦いとなるがアメリカが勝利、その後アメリカを脅かすのがなんとメキシコだというのだが、それより気になるのはやはりわが日本のことだろう。


ちなみに日本が戦争を起こすのは、そうでもしなければ国家が破綻するくらいに追い詰められてのこと。著者は日本について「2020年代に何らかの思い切った措置を講じなければ、世紀半ばに間違いなく経済的破綻を迎えるだろう」(p.214)と明言するのである。


「日本の人口は現在1億2,800万人だが、2050年までに1億700万人に減少する。しかもこのうちの4,000万人が65歳以上、1,500万人が14歳以下である。これら5,500万人を労働力から除外すれば、経済を管理可能な水準で維持することは難しくなる。労働力不足とエネルギー不安の板挟みになった日本には、地域覇権国を目指す以外に取るべき道はない」(同頁)


日本のことにかまけすぎて地政学について書くのをすっかり忘れていたが、地政学の根本にあるのは「国家やその指導者たちによる短期的な自己利益の追求が、国富とはいかいまでも、少なくとも予測可能な行動をもたらすため、結果として将来の国際システムのあり方が予測可能になる」(p.27)という考え方だ。その意味では理論経済学、あるいは将棋やチェスの「読み」に似ているかもしれない。


もちろん、こうした予測はさまざまな外的、内的な要因によって変わりうるものだ。だから、実は地政学にとって、予測が実際に当たったかどうかを論じることはあまり意味がない。大事なのはその考え方であり、いたずらに希望的観測や極端な悲観論に流されず、どの国家も短期的に最適な決断をするという前提に立って、冷徹に国家と社会の将来を読み解く姿勢なのである。


地政学の世界に、ようこそ。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!