【1690冊目】西原理恵子『はれた日は学校をやすんで』
- 作者: 西原理恵子
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2006/03
- メディア: 文庫
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教育・学校本18冊目。
西原理恵子の初期作品集。教育・学校本に入れるかどうか迷ったが、読みなおしてみて、「生徒」の側から学校を描いた作品としては、やはり飛びぬけた作品だと再確認した。特に感性がすばらしい。
不登校とか、教育批判とか、そういう「名前」がつけられる前の、もっと漠然とした、先生とか制服とか、友達とか男の子とか、タバコとか染めた髪とか、そうしたものへの淡い感情。
思春期の心の、もっともやわらかくて繊細な部分を、このマンガはなんとみごとに写し取っていることか。特に印象的だったのは、さんざん学校に行きたくないと友達に駄々をこねた「わたし」が、「学校ってかわらないところなんだから、考えないでつきあってやろうよ」と言われ、次のように思うくだり。
「もしわたしが学校だったら、きっとすごくかなしいと思う」
同じような雰囲気は、男の子の心情をやはり繊細なギリギリのところまで描いた「はにゅうの夢」という作品にもある。弱くてどうしようもない「もの」と、それを守り切れなかったり、かえって傷つけてしまう、やはり弱い「ぼく」。西原理恵子はそんな人の弱さを、どこかで突き放しつつも、一方ではとことん慈しむ。
安っぽいヒューマニズムではない。もっとどうしようもなく、ある意味救いようのない、何か。漫画家サイバラが描き続けるのは、その、世界の澱のような、名づけようもない「何か」なのだ。
一方でギョッとするほどアグレッシブなのもサイバラ漫画の特徴だ。本書でいえば「トレンドファッション」「B級ぐるめ」や「徳松じいちゃんの秘宝」あたり、別著でいえば有名レストランを斬りまくった『恨ミシュラン』や自虐ネタ満載の『まあじゃんほうろうき』あたりなのだろう
そして本書は、一冊の中にこの両方の要素をバランスよく詰め込んだ、ある意味「西原理恵子入門篇」としてぴったりの作品集。冒頭の切り絵をつかった「むかしのこと」(これは名作)にはじまり、全篇にわたって、サイバラの破壊力と繊細さをとっかえひっかえ味わえるお得な一冊なのであります。