自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2245冊目】西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』

 

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (角川文庫)

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (角川文庫)

 

 

生まれ育った漁師町で触れた「魚の匂いのするカネ」。美大予備校時代、50社以上に売り込みをかけてやっともらった、カット1枚数百円のギャラ。ギャンブルの果てにつぎ込んだ「マンション一室分のカネ」に、FXで失った「画面上の一千万円」・・・・・・。

まさに、カネを通して人生が見えてくる。読んでいてもっとも凄みを感じたのは、幾多の経験によってはぐくまれた、著者の「カネ」との距離感だ。カネをないがしろにしているわけでは、もちろんない。だが、カネに執着しているかと言われれば、それもちょっと違う気がする。カネとうまく付き合いつつ、ちょっと冷めた距離を置いている、という感じ。これ、なかなかできることではない。

例えば「自分がやりたいことがわからない」という人に対して、著者は「「カネとストレス」「カネとやりがい」の真ん中で探してみてはどうか、と提案する。給料はよくてもストレスフルな仕事と、給料は悪いがやりがいがある仕事。その両極の間に、「落としどころ」を見つけるのだ。なにがなんでもカネ、というわけではなく、カネなんてどうでもいい、とも言わない。バランスが良いのである。

別のところでは「お金とは人間関係のこと」とも書いている。例えば、食事に行ってワリカンにするか、どっちかがおごるか。貸してくれと言われて、カネを貸すか。借りた金を返すかどうか。損したくないと思ってばかりいると、人はズルくなる、とも言っている。当たっている、と思う。

カネの力。カネの魔力。だが、カネと付き合わずに人生を送ることはできない。だったら、正面からカネとの付き合い方を考えてみよう。本書はそのための、絶好の入口になるはずだ。