自治体職員の読書ノート

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2597冊目】千葉徳爾『日本人はなぜ切腹するのか』


絶版のため図書館で借りたが、これは面白い。どこかで復刊してはくれないか。


面白いが、痛い本でもある。とにかく「腹のかっさばき方」がいろいろ出てくる。一文字に十文字、途中でつっかえたらどうするか(いったん刀を抜いて反対側から突き入れるそうだ)、介錯のやり方など。


特に大事なポイントが「臓物を出すかどうか」。江戸時代の一般的な切腹の作法では、内臓を外にこぼれさせるのは「無念腹」といって、タブーとされてきた。だが歴史を辿ると、むしろ内臓をつかみ出して外にさらす方が一般的だったという。内臓を外に出すことで、身の潔白や赤心を証明する、という考え方があったからだ。


そもそも切腹のルーツはどこにあるのか。本書はその起源を、国内では平安時代、あるいは神話まで遡る。播磨国風土記切腹をするのは、なんと女神。夫への恨み怒りから自分で腹を裂き、入水自殺したのだという。ご丁寧にも、現場となった沼には「ハラサキ沼」という名前までついているそうだ。


さらに著者は、外国の切腹事例まで紹介する。多いのは中国で、しかも唐代にまでさかのぼる。興味深いのは、ここでも切腹の理由が「自分の真の心を見せるため」だということだ。中国で女性の切腹事例が多いのも意外。これも凌辱されたと思われた女性などが、身の潔白を明かすために行ったものだそうだ。


このくらいにしておくが、本書は、他にもさまざまな切腹エピソードが満載だ。自殺の方法としては決して合理的でもなく痛みも激しいこの行為が、「ハラキリ」として有名になるほど広まったのはなぜか。そのことが気になったことがある人なら、読んで損のない一冊だ。


ちなみに著者は柳田國男の弟子筋でもあるらしいが、歴史学民俗学か解剖学まで取り混ぜた本書の書き方もユニークである。わからないことはわからないと言い切る姿勢にも好感がもてた。