hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2598冊目】庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』


1969年芥川賞受賞作。学園紛争とかゲバ棒とかマオジューシとかも出てきて時代を感じるが、しかしこの本の個性そのものは、少しも古臭くない。


全編が「ぼく」の一人語りで、そのため村上春樹に影響を与えたとかサリンジャーの影響を受けているとか言われるのだが、しかしこの一人語りが変わっているのは、ひたすら自分の思念や感情を追いかけ、誰かとしゃべっていても何かを見ていても、そこからどんどん「語り」がずれてくるところだ。


村上春樹のような、一人語りだけどどこか自分を突き放したようなスタンスとは違い、むしろ自分自身にべったりと絡め取られ、みずからその奥底に降りていくような。サリンジャーはどんな感じだったっけ。


もちろん、そうやってどんどん自分の中に降りていくと、いろんな意味でのダークサイドに堕ちていく危険もあるわけなのだが、そこで「ぼく」を救うのが、爪を剥がした足の指を踏みつけた女の子であり、タイトルにある「赤頭巾ちゃん」なのである。といってもなんのことやら、と思われるだろうが、「痛み」と「他者」が自己へのとらわれを解放してくれるというのは、なんとも意味深だ。