自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2460冊目】川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』

 

すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)

すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)

 

 

あけましておめでとうございます。今年も良い本に出会えますように。

 

さて、2020年の一冊目は、ひさびさの川上未映子。相変わらず、きらめくような文章が美しい。この人の場合、筋書きやキャラクターを書くために文章があるというより、美しい文章を生み出すために、小説という形態が必要なのかもしれない。

内容は恋愛小説だけど、なんとも淡くてせつないのは、主人公の冬子自身が実に痛々しいからだ。自分に自信がなく、人とのコミュニケーションが苦手で、飲み会の返事を出すのに3日悩み、休みの日は気付くとやることも会う人もない。誰にも迷惑をかけてないはずなのに、なぜか一部の女性からはうとまれる。

そんな女性がある男性と出会い、恋をする。それが恋愛小説なのだからと言われればそうなのだろうが、筋書き自体はなんともオーソドックス。でも、それでいい。どんな恋なのか、説明するのは野暮というもの。冬子の「生きにくさ」に共感できる人なら、心に刺さること確実だ。