【2162冊目】デニス・ルヘイン『ミスティック・リバー』
ジャンルとしてはミステリーになるのだろうが、それにしても、重い。11歳の頃の痛ましい経験が、25年後の「今」に残響し、とんでもない悲劇をもたらしていく。
25年前は11歳の少年だったショーン、ジミー、デイヴ。ショーンは刑事になり、ジミーは裏社会の住人になる。そして、ニセ警官によって誘拐され、4日後に逃げ出したデイヴは、暗い過去を振り切るように社会人としての生活を営んでいる。だがジミーの娘ケイティが殺害され、その捜査をショーンが担当、事件の夜にデイヴが血まみれの服で帰宅したことから、かつての因縁の糸がふたたび絡み合い・・・・・・
誰がケイティを殺したのか。デイヴは問題の夜、何をしていたのか。不幸な偶然が重なり合い、物語はとんでもない方向に転がりだす。特にデイヴの妻シレストがジミーに「血のシャツ」の話をするあたりからの数章は、あまりのすさまじい展開で本を置くことができなくなった。
人は過去から自由になることはできるのか。わずかなボタンの掛け違いが、大きく人生を変えていく。その絶望と不条理の奥に、わずかに見える希望の光。名作である。ちなみに読了後、クリント・イーストウッドが監督した映画も観たが、こちらもすばらしかった。特にジミーを演じたショーン・ペンが最高だ。