自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2414冊目】NHKスペシャル取材班『老後親子破産』

 

老後親子破産

老後親子破産

 

 

老後の貧困は単身者の問題、家族がいれば大丈夫、と思っている人は、案外多い。だが、その「家族」が非正規雇用だったら? 老親の介護で仕事を辞めていたら? 長年自宅でひきこもっている人だったら?

こうした問題が今、どんどん顕在化してきている。就職氷河期世代も今や40代、親の介護が現実味を帯びてくる年齢である。正社員の職に就いていたとしても、親の介護のため田舎に戻り転職をするとなると、年齢もあってなかなか仕事が見つからない。不安定な派遣労働や契約社員でも、見つかればまだラッキーだ。

本書には、親だけなら受けられる生活保護が、稼働能力のある子の同居によってかえって受けられなくなる事例も登場する。もっとも、ちょっと気になったのが、まるで「親との同居が貧困を生むような仕組みを生活保護制度が持っている」ような取り上げ方がなされていること。ここはいささか、「老後親子破産」の前提が生活保護制度の欠陥であるという「結論先取り」になってはいないだろうか。申請主義とはいうが、生活保護制度には申請を待たず職権で保護を開始できるルールもある。問題はそのルールが活かされていないこと、さらに言えばアウトリーチが保護申請のシステムに組み込まれていないことなのである。

「福祉のお世話になりたくない」という意見もよく聞くところであるが、そもそも年金が安すぎて、生活保護に頼らざるを得ないのが問題なのだ。この点は同じ厚生労働省の中にもかかわらず制度の縦割りが顕著で、生活全体を総合的にファイナンスする仕組みが存在しない。生活保護費をどうせ払わなければならないのなら、せめて高齢者だけでもベーシックインカムのような仕組みを導入し、年金はその上乗せにしてはどうだろうか。

あとは民生委員制度の見直しが必要だ。無給のボランティアに頼る制度はもう限界だし、実はきわめて高度なソーシャルワーク能力が必要な仕事。専門性を高めるかわりにきちんと給与を支払い、問題を抱えた家庭の早期発見と初期支援をきっちり行ってもらうことが必要なのである。