【2415冊目】ロバート・キャパ『ちょっとピンぼけ』
写真家ロバート・キャパが第二次世界大戦の従軍カメラマンとして経験した、最前線の戦争と、兵士たちの日常を描いた手記。砲弾の飛び交う戦場の描写はどこか非現実的で、むしろ兵士たちの軽妙なやりとりの中に、戦争のリアルを感じる。雰囲気としてはベトナム戦争を描いたティム・オブライエンを思わせる。写真に関する言及は意外に少ないが、中で印象的だったくだり。
「私はあらゆる角度から写真をとった。砂塵の写真、砲煙の写真、将軍の写真、といったように。けれども、私の感じた、またこの肉眼で捉えた戦闘のあの緊張や劇的な場面を、真に撮し得たものは一つとしてなかった」(p.70)
戦争でもっともいたましいのは、子供たちの死だ。キャパは死んだ子供たちの写真を撮った。
「この飾り気のない小学校の葬式でうつした写真こそ、戦いの勝利の一番の真実を示すものであった」(p.124)
そしてその写真を、レセプションで勝利を祝う将軍の写真と一緒に「ライフ」誌に送ったという。これこそが「キャパ」。反骨の写真家の真骨頂なのだ。