自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2325冊目】結城康博・嘉山隆司編著『高齢者は暮らしていけない』

 

高齢者は暮らしていけない――現場からの報告

高齢者は暮らしていけない――現場からの報告

 

 

ケアマネや特養の施設長、自治体のケースワーカーなど現場の人が分担執筆しているだけあって、金銭面を中心に、高齢者福祉制度の「足りないところ」「おかしなところ」「現場とのギャップが生じているところ」が集中的に理解できる一冊だ。ただし本書は刊行が2010年であり、現状を知るにはいささか古く、サ高住や軽費老人ホーム、生活困窮者自立支援などについては触れられていないので、鵜呑みにするのは危険。むしろ「制度と現場のズレ」に関する基本的な着眼点や考え方を知るための本だと思った方がいい。

印象的だったのは、無年金、低年金などの貧困ケースに加えて「お金はそこそこあるけどサービスの利用に結びつかない」ケースがけっこうあるということ。お金がかかってもったいないとサービス利用を拒否していたのに、死亡後に数百万の現金や数千万の貯蓄の入った通帳が見つかることもあったという。これを単に「無知」と片付けるのは簡単だろうが、むしろ「財産を福祉に換金する行為」を支援する必要があったと見るべきなのではないか。

第10章では現状の福祉制度(といっても2010年当時のもの)に対する提言がなされているが、これも今の制度を知ったうえで読むと面白い。興味深いのは「高齢低所得者医療・介護負担免除制度」の提案。これは高齢低所得者の医療や介護にかかる自己負担額や保険料を免除することで、結果的に生活保護受給に至らずに済む高齢者を増やすというもの。「生活保護のお世話にはなりたくない」と困窮した生活を送る高齢者を救済することにつながる。濫用や悪用が起こらないよううまく運用をコントロールする必要はあるにせよ、一考に値する提案ではないだろうか。