自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2410冊目】読売新聞社編『建築巨人 伊東忠太』

 

建築巨人 伊東忠太

建築巨人 伊東忠太

 

 

著者名はなく「読売新聞社編」とのみ書かれているが、その割になかなか攻めた造本設計になっている。建築家の本なので図版が多いのは当然として、絵と文字を組み合わせた自叙伝ならぬ「自画伝」を手書きのまま25ページにわたり掲載し、本文も一段組と三段組をまぜこぜにして、有名な建築にはそれぞれ別の著者によるエッセイが付され、知られざる「時事漫画」までたっぷりと掲載している。ちなみにこの「時事漫画」はケッサクだ。大正時代の世界情勢を擬人化して描いているのだが、ユーモラスで風刺が効いていて、なんともいえない素朴な味わいが漂っている。

それはともかく、やはり凄いのは建築だ。築地にあってインドの寺院を思わせる築地本願寺、「正面から見るとお寺、横から見ると神社、背後へ回ると五重塔、中に入ると教会」(p.122)という驚異のハイブリッド建造物である東京都慰霊堂、「逆立ちした傘」がにょっきり屋根の上から生えているごとき祇園閣、日本風とも西洋風ともつかぬ不思議な雰囲気の遊就館。(おそらく)共通しているのは、いろんなものを混ぜているようでいて、そこに日本の「ルーツ」と「未来」を織り込んでいるところだろう。ギリシャ建築のエンタシスからトルコ、インド、中国と、ユーラシア大陸をまたいだ「目」で、伊東忠太は日本を捉えていたのではないか。

もうひとつ、面白いのが建物のあちこちに仕込まれた「動物」や「怪物」たちの姿である。西洋建築のガーゴイルから神社の狛犬まで、建物と動物の縁は決してまれなものではないが、それにしてもこれほどの質と量と迫力を感じさせるのは珍しい。いったいこれは何なのだろうか。よくわからないが、そこがまたこの人の建築の魅力なのである。