自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2408冊目】竹内※『生きるための図書館』(※=「折」+「心」)

 

生きるための図書館: 一人ひとりのために (岩波新書)

生きるための図書館: 一人ひとりのために (岩波新書)

 

 

著者の名前は初めて見たが、なんと御年90歳以上、学校図書館勤務を経て大学で図書館学を教え、日本図書館協会理事長も歴任したというから、いわば図書館に生涯を捧げてきた方であるようだ。本書はそんな著者が、日本の図書館の過去、現在、未来を語る一冊だ。

歩いていける場所にある公立図書館の大切さ。子どもと本の出会いの場を創ろうとしてきた石井桃子や斎藤尚吾らの行動。学校図書館の知られざる挑戦に、東日本大震災で被災者たちが集まった図書館の話まで、扱われている話題は幅広いが、どの行間にも著者の温かいまなざしと図書館への思いが注がれていて、それが読んでいて心地よい。中でも、被災後の6月1日に仮開館した被災地の図書館で、館内にはいつも人の姿があり、イベントは大勢の人でにぎわったという話が印象的だった。その前の子どもの日には、全国から集まった3万冊の寄贈本を市民に配布したという。図書館の役割というものを改めて考えさせられる。

著者は、図書館とは教育のうち「育」を担うところであるという。何かを教えるのではなく、「その人が自分の力で物を考えることを支援する機関」(p.109)であって、そのためには「一人ひとりが『読む力』を育て、必要な知識や情報を自分で探し、物事を判断できるようになること、つまり人の成熟と成長にかかわる仕事」(同頁)なのである。しかもそれは、学校が集団教育であるのとは異なり、一人ひとりがそれぞれに行うことなのだ。

現実の公共図書館学校図書館の多くは、なかなかこうした理想に手が届くところには至っていない。図書館によっては職員のやる気が乏しく、あるいは委託に切り替えられ、レファレンス・サービスすら満足に受けられないところも少なくない。2017年現在の図書館の資料費総額は、1999年の8割程度だという。貸出冊数は2010年の7億1,600万冊が2017年には6億9,100万冊。図書購入費の減少に加えて「司書の異動による選書能力の低下」がその背景にあると著者は指摘する。一部で先進的な取り組みが行われてはいるものの、図書館の未来は決して明るくはないのである。